文春文庫×エブリスタ バディ小説大賞 第1回「お仕事」

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総評

 第一回へのたくさんのご応募、ありがとうございました。力作揃いで、選考会も盛り上がりました。
受賞作、入選作につきましては各評にもありますが、全体的な評価のポイントについて。
どのような題材、舞台、人物を選ぶかというセンスと、それを支える文章力の安定感は、多くの作品と比較される上では、大きなアドバンテージになります。

 最終候補作のほとんどは現代の日本が舞台でした。自分がよく知っている場所を描くほうがリアルな作品になりやすいことを考えれば当然です。そこから国やジャンルをスライドさせるのは難しい挑戦です。架空の場所を設定するならば、そこでの生活や風景、実際には存在しない仕事を作るならば組織や人間関係などのディテールを考えておかないと(すべてを書くかどうかは別にしても)、結果としてストーリーやキャラクターがぶれて、読者にとっては入りづらい世界になってしまいます。逆に、そこをうまく書けた場合は大きな魅力を持つ作品になります。
ジャンル選びも重要です。今回はミステリー仕立てのものが多かったですが、無理にミステリーにせずに、SFやファンタジーとして書いたほうがよいものもありました。自分の書きたい設定にあったジャンルを選ぶ眼差しも大事です。

 また、リアリティのある設定の場合は、「必然性」と「プラスアルファ」がほしい。よくある設定やキャラクターから、一段階上へあがるために、ただ現実の通りに書くだけではなく、さらに想像力をはばたかせていく必要があります。応募作の中には過去のヒット作と似た設定のものもありました。そうした場合、なぜその題材で書くかという読者を納得させる「必然性」や、既存作品と一味違った「プラスアルファ」がなければ、読者には既視感を持たれて損をしてしまいます。既存作品の小説、漫画、ドラマ、映画などで見た設定、キャラクター、シーンの模倣は、すぐに見抜かれます。「ありがち」「ベタ」な要素には細心の注意をもって臨んでください。

 また、いくつかの作品で「書きづらいこと」「難しいこと」の回避が指摘されました。慣れないうちは、どうしても苦手な部分を避けて話を書き進めてしまいたくなりますが、そこをあえて書くための努力をすることで、小説は確実に面白くスリリングになります。自分にとって書きやすい事柄だけを書くのではなく、ぜひ逃げずに、「書きづらいこと」「難しいこと」にも挑戦してください。

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消防士と警察官のバディもの。設定のオリジナリティが光っていました。作品としての個性があって、他作品からひとつ抜けていました。「焦げ付いた現場から真実のダイアモンドを拾い上げる」という部分もキャッチーです。クールな頭脳派と熱血漢という組み合わせでしたが、変人キャラがちゃんと書き込まれています。変人キャラは他の作品でも多く登場しており、ひとつのパターンではありますが、その中でも、キャラクターの個性にプラスアルファの部分がありました。また主人公二人の周辺の人物についても手を抜かずに書けていました。女言葉の署長のキャラクターなど、過剰だけれど魅力的な造形になっています。脇役がいない作品も多数ありましたが、よほどプロットやアイディアの部分で頑張らないと、どうしても作品の密度が薄く見えてしまいます。ミステリーとしての構成もなかなか達者で、評価が集まりました。VRでの捜査もサービス精神があって、面白い。一方で、文章的にはもっとブラッシュアップの余地があると思います。冗漫な部分を整理し、わかりにくい比喩を使わないようにし、全体的なスピード感を増すこと。そぎ落としてシンプルにすることで、キャラの良さがもっと生きるのではないでしょうか。総合的な評価として、「バディ小説大賞」という賞の意図にあったキャラクター、「お仕事」というテーマにあった設定、そしてシリーズ化も見据えた構成が高く評価され、大賞となりました。

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金継ぎ教室が舞台の日常の謎系ミステリー。短篇としての完成度は随一でした。会話劇で進行しますが、描写もしっかりしていて、風景が見えました。安楽椅子探偵の鏡花と情報をもたらす相棒の理子、女性二人の人物造形が魅力的。金継ぎ教室に集まってくる生徒たちや理子の義母などのキャラクターも信憑性をもって描かれ、好感度が高かったです。謎やキーワードもうまくリンクして、ミステリーとしても高評価でした。作中にコナン・ドイルや泡坂妻夫の作品を登場させたり、雑学の盛り込み方にも、小説をたくさん読まれていて、それが文章に生きているのを感じました。ただ、今作は謎が金継ぎ絡みというところで、シリーズ化が難しいところがあるかもしれないので、そのあたりの工夫を今後見ていきたいと思います。

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トラブル対処の部署に配属された新人OLの成長物語。会社内の労務管理という、「お仕事」に焦点をあて、現代性のある題材の選び方が高ポイントでした。バディ小説としても新人OLと、どこか飄々とした上司との組み合わせが面白い。あくまでも会社側の人間として労務管理をしなくてはならないのに、苦しむ社員との板挟みに悩むヒロインにも共感でき、好感を持って読み進められました。ユニオンとの団交というクライマックスに向けて、電話での二人のやりとりが解決につながるというところも、短い期間でつちかわれた関係性がよく書かれており、小説としての完成度が高いとの評価でした。作品としては長編の冒頭部分という感じで、まだまだ明らかにされていない部分も多く、今後どうなっていくかが気になります。おおむね読みやすく、わかりやすいエンターテイメントですが、欠点としては、コミカルなパートと、本来筆者の方が描きたいだろう「ロウカン」のシリアスな部分とのテンションが違っていて若干読んでいて途惑うので、そのあたりをもう少しこなれた書き方にできればとさらに良くなると思います。

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BAR SMOKEカクテルにまつわるストーリー

BAR SMOKEカクテルにまつわるストーリー

1.ソルティードッグ

楠木斉雄

バーのマスターと元OLの探偵物。ありがちな組み合わせではあるけれど、頭脳明晰なマスターと、事務能力の高いOLという二人の役割分担ができていて、心地よく読みやすいチャーミングな作品でした。京都のバーというのは、シリーズ物の舞台装置としても魅力的です。今回の応募作の中では、京都という具体的なロケーションの設定、マスターが沖縄出身というバックグラウンドが珍しく、目を引きました。随所に筆者の観察眼が感じられて、細かい描写がある点もよかったです。バーという場で登場する料理が美味しそうに描かれていたところや、バーのシステムを初心者の目線で描いている点など、ポイントが高かったです。ミステリーとしては、妻のたくらみが明らかになる部分の評価が分かれました。結末も含め、全体的に良かったという評価がある一方で、無理があるという意見も出ました。また、読みやすい反面、ひっかかりがなさすぎるのが物足りなくも感じました。「バディ」になっていく過程で、二人の間にぶつかりあいがあったほうが良かったかもしれません。また、方言を多用したり、ご当地感を使ってキャラクターのアクを強めるなど、もう一つ加味がほしいなと思いました。

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霊の〈声〉が聞こえる刑事・井上と、天才鑑識官・山南。タイトルにセンスを感じます。誰も相手にしなかった井上を、初めて認めてくれた山南。二人の補完関係が心地よく、ポイントが高かった作品です。二人とも謙虚で静かながらどこか普通と違う部分があるという共感覚的な部分が、バディものとしては新鮮で、それでいながら、お互いを補い合う関係性に、バディとしての組み合わせの「妙」がありました。キャラクターや設定を評価する一方、ミステリーとしてはストーリーが弱く、受賞には至りませんでした。警察組織や捜査方法については少し調べて書くだけで、格段にリアリティが増すと思います。

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事故死した父親の後を継いで便利屋になったニート青年と、魂が犬に乗り移った父親の物語。「小説」を書こうという意志が感じられる作品でした。描かれている人物造形がリアル。子供が犬にだけ内緒話をしてくれるなどの細部もうまいし、依頼と並行して起こる出来事のオフビート感も好感度が高かったです。それぞれの謎の解決のオチの法則性がわからなくて、楽しんで読めました。四十九日が一つの区切りになるという設定は、最初からはっきりさせていてもよかったのではないでしょうか。地元に言い伝えがある、などの伏線をはって、タイムリミットを設けることで、緊張感をもたせた方がより面白くなったと思います。誘拐事件にはかなり無理があったので、日常の謎を積み重ねたほうが完成度はあがったかもしれません。細部についてはもっと読み返せば、かなり締まったものにできると思います。

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スケジュール募集期間:2017年11月2日(木)17:00:00 ~ 2018年1月31日(水)23:59:59中間発表:2018年3月15日(水)結果発表:2018年4月下旬予定- 結果発表時に編集者座談会を公開 -最終選考作品の傾向から、魅力的なキャラクターとは?書籍化作品に必要なものは?を語り合う、作家志望者必見の座談会です!賞大賞 1作品(賞金10万円+電子書籍化+文藝春秋編集者とメールで5往復までのアドバイス)準大賞 1作品(賞金5万円+選評)入賞 1作品(賞金3万円+選評)佳作 数作品(選評)※該当なしの場合もあります。

募集内容芥川賞・直木賞と深いかかわりをもつ文藝春秋と、エブリスタがタッグを組んで、「バディ小説」をテーマに新人作家育成プロジェクトを行います!募集は全3回。各回の受賞作に文藝春秋の編集者が選評をつけます。さらに大賞受賞者は、文藝春秋編集者よりメールで5往復までのアドバイス(※1)をもらえるので、レベルアップできること間違いなし!全3回とも、募集内容は「バディ小説」。第1回目のテーマは「お仕事」です。魅力的な主人公と、そのバディ(相棒)が織りなす、「お仕事」が登場する物語を募集します。・敏腕刑事と気弱な探偵のコンビが事件を解決!?・ダメリーマンの主人公と天才派遣社員が立ち向かうトラブルとは!?・何でも綺麗にできる、クリーニング店のパート主婦……実は神様が相棒で!?・美少女とドーベルマンのコンビが開いている不思議なお店とは……。など、主人公がコンビになったお仕事小説をお待ちしています!※1:受賞者より質問メールを5回まで送信、それぞれに対して編集者より返信を5回です。質問数に制限はありません。

応募要項1)主人公に「バディ(相棒)」がいること2)「お仕事」をテーマにしていること3)3万字~5万字※文字数は「文字数カウント(空白・改行を除く)」を参考にしてください。4)公開状態の作品

※上記4項目に沿っていない作品は選考外となります。

※非公開作品は審査対象外となります。

※お一人様、何作品でも応募頂くことが可能です。

※新作推奨ですが、過去作・他の賞で落選した作品を上記の形に再構成して応募戴くのも歓迎です。

※完結している必要はありませんが、〆切時点での完成度も選考の対象となります。

※エブリスタ内の他公式イベント(重複応募を許容しているイベント)との重複応募も可能です。

※エブリスタ内の他公式イベントで過去に受賞した作品で、書籍化などの予定のないものは応募可能です。他サイト等の文学賞で過去に受賞した作品は選考対象外とします。

※シリーズ設定されている作品も、エントリーされた話のみが対象となります。

※エブリスタ上での有料作品・無料作品のどちらでも応募可能です。

※応募締切り後の作品編集可。 (ただし、審査は、締め切り時点2018年1月31日(水)23:59:59のデータで行います。)

今後のスケジュール第2回:バディ小説 テーマ「ロケーション」2018年3月2日(金)~2018年5月31日(木)募集第3回:バディ小説 テーマ「キーアイテム」2018年7月2日(月)~2018年9月30日(日)募集

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