このコンテストは受付を終了しました

新星ファンタジーコンテスト「魔法学校」
 今回のテーマは「魔法学校」。魔法学校での学園生活や、魔法学校を舞台にしたゲームへの転生を描いた作品が多く集まった。学校というのはとても便利な舞台だ。社会から切り離された楽園(もしくは監獄)として描くことも、コミュニティと地続きな社会の縮図とすることもできる。そして魔法。魔法が便利であればあるほど、その魔法を含む社会を成立させる難易度は高くなる。そういったところを少し意識し、学校そのものや、その学校を取り巻く社会に、仕掛けや特殊な設定を加えることが出来れば、ファンタジーならではの学園小説の魅力をより強く打ち出すことが出来るはずだ。  さて、このテーマで最近度肝を抜かれたのが、アメリカの女性作家ナオミ・ノヴィックの《死のエディケーション》シリーズ(井上里訳/静山社)だ。この学校には教師が存在せず、学校そのものが生徒を教育するのだが、学校の中は魔物だらけで、むしろ学校が学生を食い殺そうとしているとしか思えない。さらに卒業試験の合格(生還)率は低く、闇落ちした学生が、残りの学生を虐殺した年すらある。そんなとんでもな箱の中で、友情やラブストーリーが展開する。ぜひこちらもお読みください。 (三村美衣)

大賞

王国貴族の子弟が通うラエニスタ中央国家学院には、魔騎士を育てる魔術科と、魔力を持たない者が通う普通科があり、両者は校舎もカリキュラムも異なり、交わることがなかった。ところが、第一王子が探し求める魔術士が、魔術科ではなく普通科にいるという噂がたち、長い学園の歴史ではじめて、二つの科の交流イベントが開かれることになるのだが……。優秀でカリスマを備え、さらに実は魔力も持っている横紙破りの普通科生徒会長を主人公に、絶対的なヒエラルキーに支配された男子校の一年間が描かれる。《魔法科高校の劣等生》を彷彿とさせる面白さに、ほんのりBL風味あり。魔力を持つ貴族が国を支える世界で、王家の駒となることを嫌い我が道を貫く、実はけっこう男気のある主人公なのだが、その生真面目さをカモフラージュする、ほどよく抜けた語り口も楽しい。

準大賞

魔法学校の卒業試験は「プネウマとの面会」と決まっている。プネウマというのがどういう人物なのか誰も知らない。そして試験会場は「夜の間」だ。でも「夜」ってなに? という謎めいた冒頭がとにかく唆る。誰も見たことのない試験官、誰も経験したことのない「夜」。いったいここはどういう世界なんだろう、卒業試験で何が起きるのだろうという緊張感に引き込まれる。生徒たちに課される理不尽な問い、試験の先で待つ死の気配、焦燥感。そういったものの果てに、魔術師となる彼らがこの先ずっと、背負い続けなければならない「夜」が明かされる。イマジネーションを喚起する刺激的で思弁的な短編。

入賞

「魔法」が発見されて四半世紀。新たな力に法整備が追いつかず、魔法を悪用した事件が起こり、多くの被害者が生まれた。日本では魔法の行使に資格を設け、資格取得のための魔法学部が新設。飛び級を重ね、若くして魔法法律学の講師となった女性と、彼女に猛然とアタックする学生のラブストーリー。なのだが、ふたり揃って秘密が多く、陰謀の渦中へと巻き込まれていく。現代社会で新たに魔法が発見されるという難しい設定に挑んだ力作。学校を舞台にすることで、魔法の発見によって変容しているであろう社会と、一定の距離を置くことができる点も上手い。人物紹介編的な第一話で、今後の展開が期待される作品だ。

佳作

魔法学園の生徒が、日常の事件を解決する謎解き要素の入った学園ファンタジー。いずれの事件にも妖精が絡んでいるところがこの作品の要だ。妖精や錬金術などの知識も豊富で、世界設定がしっかりしている。主人公の抱える過去のトラウマが、物語に陰影を与え、妖精というこの世のもの、人ではない存在の理不尽さや、ここではないどこか別の場所への郷愁や畏れといった感情がリアリティを持って描かれている。ファンタジー好きにおすすめな作品。
難易度の高い乙女ゲーの、地味なサポートキャラに転生した主人公。悪役令嬢が瘴気を暴走させる全滅エンドがあるだけに、精一杯ヒロインを助けようと決意する。ところがこのゲーム、バグが多いことでも有名なのだが、あろうことか同室のヒロインが実は男性だったという衝撃の展開に遭遇。さらにヒロインと恋人同士になってしまい、もはや誰のストーリー分岐にいるのかも定かではない。果たして女性ですらないヒロインが、聖女に覚醒するハッピーエンドに辿り着くことができるのか……。捻った設定からはじまる、ユーモラスな学園ラブストーリーだ。前向きで献身的な主人公がヒロインとの恋愛に嵌っていく過程も楽しく、R指定の過激描写もラブラブで、読者を幸せな気持ちにさせてくれる。たいへん面白かったが、ファンタジーとしての要素が弱いのが難点。
竜の卵の中にいるのが、竜の子供か、竜の卵を乗っ取った悪魔なのかわからない。竜であれば卵を孵したものに魔法の恩恵を与え、悪魔なら災厄が世に放たれる。それを判定する技術者を育成する学校、という設定がとにかく良い! 自分で育て、情が移った卵の中身が竜なのか悪魔なのかわからない。さらに悪魔はかわいい竜の仔のふりもするし、甘言を弄して判定者を騙しにもかかる。このなかなかにエグい設定を、ジュヴナイル調のユーモラスな筆致で描いている。ミステリ連作にもできるし、さらに大きな物語を仕込むことも可能。まだ話は始まっていないに等しいが、これは絶対に面白くなるはず。とにかく今後に期待。
悪役令嬢がヒロインに振り回される様子を、悪役令嬢側から描いた短編。愛され天然ドジっ子なヒロインが、頑張る優等生な悪役令嬢に執着し、テリトリーをどたばたと引っ掻き回す。苛立ちながらも振り切れない令嬢も、ひたすらまとわりつくヒロインも、どちらもかわいい。ありがちな設定だが、コンパクトに纏められており、これが乙女ゲーム世界でヒロインが転生者であるとわかると、全てがすとんと腑に落ちる。物語の中の女の子に、女の子が寄せる気持ちとしても納得の描きっぷりで、女子の友情ものとして気持ちよく読める。結末も爽快。
子育てのために現場を離れた魔法使いが、子育てを終えて復帰のために魔法学校に再入学する、という設定に意表を突かれた。自分の子供よりも幼い生徒と、自分よりも若い先生の中に入った「おばさん」が、人生経験とおせっかい心を武器に、若者たちの悩みを解決する。このおばさんが凄い魔法使いというわけではないので、そもそも彼女にできることはとてもささやかだ。特別な能力を持つ者だけが使える魔法から、使用者を選ばない技術へと切り替わる技術革新の時代を、平凡な魔法使いのセカンドライフと重ねて描き出そうとした着眼点が面白い。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2023年11月6日(月) 12:00:00 ~ 2024年1月8日(月) 27:59:59 ・最終結果発表:2024年3月中旬頃予定
募集テーマ
第16回目のテーマは「魔法学校」です。
・魔法はあるが、それを教える場所がない世界に転生した校長先生。よし、魔法学校を創ろう! ・学園の図書館から魔導書が盗まれた。疑われたのは、図書館の主と呼ばれる異端の生徒で――。 ・廃校となった魔法学校の地下に、広大で危険な迷宮が封印されているという噂が広まり……?
「魔法学校」の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等への重複応募が確認された場合、応募取消しになる場合があります。
メールアドレスの受信設定について
選評の送付や書籍化の打診は、エブリスタに登録されたメールアドレス宛にご連絡いたします。迷惑メール防止の為にドメイン指定受信の設定をされている場合、メールが正しく届かないことがございますので、「@estar.jp」を受信できるよう設定して下さい。
応募の辞退について
応募期間中であれば、作品管理から応募の辞退が可能です。(操作手順はこちら) 締切後の応募辞退は原則として出来ませんので、ご応募の際はご注意ください。

コンテストの注意事項(必読)