文春文庫×エブリスタ バディ小説大賞 第2回「ロケーション」

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総評

 第二回へのたくさんのご応募、ありがとうございました。今回も力作揃いでした。前回に続いてご応募をくださった方も多かったです。

 受賞作、入選作につきましては各評にもありますが、全体的な評価のポイントについて。

 今回は「ロケーション」がテーマということで舞台設定の工夫が見られました。実在の場所、架空の場所、いずれを描くにしても、その場所に「いない」「行ったことがない」読者を“連れて行く”必要があります。重要となるのは、そこがどんな場所であるかの描写力です。どんな建物が見えるのか、そこに風が吹いたらどんな匂いが漂ってくるのか、など、五感をフル活用して、描写してみてください。

 「ロケーション」への工夫が見られた一方で、「バディ小説」としての特性は前回に比べやや弱かった印象です。主人公と相棒に、バディとなる必然性、個性のぶつかり合い、強い結びつきなどが重要な要素になりますが、「お互い、何者にもかえがたいバディ」という特性を意識している人は少なかったように思います。そのためには、バディとなるふたりの個性や、登場シーンなど、バランスが重要です。バディ関係を魅せるためにも、ふたつの個性をなるべく早めに登場させて、結びつきが強くなっていく展開を意識してもらいたいと思います。

 「キャラクターを設定するときに、「天才」「美人」「変人」などの個性を、その言葉ひとつで説明するのではなく、エピソードで見せていく必要があります。「天才」なら、どの分野において特性があるのか、どれだけその才能があるのか、「美人」ならどのように美しいのか、「変人」ならどこがどのように人と違っているのか。キャラクター自身の言動やエピソードで見せていくようにしましょう。

 「バディ小説では、キャラクター造形も重要ですが、そこばかりに注力した結果、物語の部分が弱くなってしまった作品も見られました。連作を意識した作りは大歓迎ですが、連作は一話一話の完成度が大事です。その一作のなかで、読者に爽快感や充実した読後感を与えられることが、次に読んでもらう大事な力となります。一作の完成度を高めるためにも、「構成を練る」「盛り込むエピソード、キャラクターを吟味する」「作品を書き終えたところで読み返す」ことを心がけると、より一層、魅力的になるでしょう。キャラクターの言動に矛盾がないか、エピソードの出し方の順番は適正か、また、初歩的なところでは、誤字脱字がないか、などのチェックもしましょう。

 「キャラクターの個性、物語の強さ、どちらにおいても、ポイントとなるのは「自分で考えていることを、人に説得力をもってどれだけうまく伝えられているか」です。そのためには細部を補強していく必要があるので、表現や描写をどう工夫したら伝わるか、ということを意識していってください。また、説得力を強めるためにも、下調べはしたほうがベターです。

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記憶することができない美術商の男と、記憶のない助手のバディものです。近未来の世界設定で、情報化されたテクノロジーがきわまって、それなしには生活できなくなっている人間というSF的な世界観が面白かったです。そこで絵画芸術が人間にどう作られ解釈されるかという観念的なテーマを書いています。短いページ数のなかで、読者が想像しやすいような説明がうまくなされ、映像が頭に浮かぶ描写力がありました。シリーズ物の第1回と考えたときに、続きが読みたくなるという点ではダントツでした。一方で、絵を求めて旅をするだけで大きな事件がおきないので、物語らしい物語がない点が気になりました。主人公となる二人の過去が謎解きとしての推進力になっていますが、オチは少し弱かったように思います。物語のなかに出てきたたくさんの「問い」の答えを放り出されたままなので、その部分を解決した上で完結すると、より魅力的な小説になると思います。助手が〈透明人間〉であるという設定は評価が割れました。ふだんは見えていないが、きっかけがあると気づかれるというのは、魅力的な設定ではありますが、それだけに、読み手としては設定としての必然性を期待しますし、物語のなかでこの設定が果たして効果的に働いているかという意見もが出ました。続きがあるならば、この点も解明してほしいです。近未来を舞台としながら、核となるアートの見方が20世紀的な点については疑問が残りましたが、クジラとイルカに準人権が認められている、というエピソードなど、SF的な工夫が随所に見られた点は独特の持ち味がありました。

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怪異を信じる或麻と、信じない子桃という正反対の少女二人の個性が、エピソードを重ねていくうちに魅力的に絡み合い、推進力がありました。作り込まれたキャラが魅力的で、「全候補作のうちいちばん面白く読めた」という声もありました。設定も物語もはじけていて、従来の文春文庫とは違うライトなテイストがあって面白かったです。バリエーション豊かな妖(あやかし)たちの起こす怪異と学校で起きる様々な事件という枠組みは連作向きで、その点も評価が高かったです。全体を通すと、やや冗長に感じられる部分もあるので、もっと整理してメリハリをつけたほうがよいでしょう。文章にドライブ感があって筆者が楽しんで書いているのは伝わりますが、この世界になじんでいない読者に不親切すぎる嫌いもあります。特異な設定なので、絵が浮かぶような描写も必要でしょうし、怪異に襲われるシーンはもっと真剣味があったほうがいいと思いますが、いったん世界に入り込めば、非常に面白く読める強さがありました。坂下くんという比較的「ふつう」な男の子が出てくるのにあまり活躍しないまま消えてしまうのですが、こういう読者が共感しやすいキャラクターがいたほうが(彼のような人物に物語を俯瞰的に見てもらうのも一つの書き方です)、個性的な女子のキャラがより生きると思いました。

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不登校児と、精霊という一風変わった組み合わせのバディものです。この精霊ココペリについての評価が割れました。ココペリはトカゲの姿をしている精霊ですが、その必然性が問われました。チャーミングで好感度が高いキャラクターだというポジティブな声がある一方、精霊である必要や、主人公の不登校児に対して、どれだけ「バディ」として仕事をしたか、という点は評価しにくい、という声もありました。文章のセンスは候補作中でも、随一の評価でした。主人公の立ち位置や姿がよく見える描き方や、人間関係をバランスよく書けている点など、構成力もよかったと思います。一方で主人公の抱える家族の問題が、学歴至上主義の父親とそれに反発する息子という構図があまりに古風で物語になじまないのでは、という意見がありました。

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今回唯一の時代物です。相棒として、若旦那と御用聞きの亀吉もいる、いわば「ツーバディ」で、新しい風を感じました。キャラクターも過剰でなく、抑えめなところがよいという声と、同心である主人公の菊之助はもう少し設定を活かしたほうがよかったのではないかという声がありました。たとえば、何を着ても野暮になってしまう、といった面白いエピソードをちりばめながら、書きっぱなしでその後使わないのはもったいない。時代小説となるとどうしても避けては通れないのですが、時代考証についての議論も出ました。厳密になりすぎると想像力を限定してしまうかもしれませんが、この分野には愛読者も多いことですし、少しずつ資料にあたってこの時代への知識を増やしていくと、さらによくなるのではないでしょうか。時代小説としての楽しさ、雰囲気の良さは高い評価を得ました。重要な登場人物である若旦那が登場するまでが長い点や、全体の構成、事件の謎などはもっと計算をしたほうがよいという指摘がありました。

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地方都市で劇団のまとめ役をする男性と、天才的な脚本家として活躍していたが地方に帰ってきた男性。今回のテーマである「ロケーション」を踏まえて、地方と東京のギャップをうまく描いている作品です。マンションで室内劇をするという今の演劇のトレンドを抑えている点や、主人公たちの過去や裏側の感情を書き込めていて、ポイントが高かったです。何人もいる登場人物も書き分けられており、筆力が感じられます。夢破れた主人公の劣等感を描いた地方小説として読ませながら、前作「ワン・モア・トライ」にあった軽快さは、今回は鳴りを潜めています。終盤の謎の解決の部分が弱くて残念という声もありました。大人の雰囲気をもった小説ですが、読後の爽快感が弱いという点で「エンターテイメント」としては改善の余地があるように思います。テーマの選び方や、キャラクターの個性や、ミステリーとしての謎の部分や、シーンの魅せ方など、何かひとつ突き抜けた部分があるといいと思います。

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道具屋兼万屋の男と、少年の主人公のバディの掛け合いもテンポよく読めて、全体的なバランスがよい作品。「ロケーション」として鎌倉という舞台を選んだところもよかったです。場所の魅力が活きている小説です。作品として、書き飛ばすのではなく、誤字脱字にも気を配るなど、きちんと見直しながら丁寧に描かれている点は評価が高かったです。ただ、キャラクターがやや類型的な点は気になりました。道具屋の野狐の背景をもっと出したり、おばあちゃんの大事にしていたビーズバッグを盗んだ少女の造形はもっと工夫の余地があったかと思います。無理にいい話にするのではなく、たとえば彼女を悪魔的な、すこし毒々しい少女にするなど、思いきってバランスを逸脱するキャラクターを出してもよかったのではないでしょうか。

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スケジュール
募集期間:2018年3月2日(金)~2018年5月31日(木)
中間発表:2018年7月17日(火)
結果発表:2018年8月下旬予定

- 結果発表時に編集者座談会を公開 -
 最終選考作品の傾向から、魅力的なキャラクターとは?書籍化
 作品に必要なものは?を語り合う、作家志望者必見の座談会です!

賞
大賞 1作品
(賞金10万円+電子書籍化+文藝春秋編集者とメールで5往復までのアドバイス)
準大賞 1作品(賞金5万円+選評)
入賞 1作品(賞金3万円+選評)
佳作 数作品(選評)
※該当なしの場合もあります。

募集内容
芥川賞・直木賞と深いかかわりをもつ文藝春秋と、エブリスタがタッグを組んで、「バディ小説」をテーマに新人作家育成プロジェクトを行います!
募集は全3回。各回の受賞作に文藝春秋の編集者が選評をつけます。さらに大賞受賞者は、文藝春秋編集者よりメールで5往復までのアドバイス(※1)をもらえるので、レベルアップできること間違いなし!
全3回とも、募集内容は「バディ小説」。第2回目のテーマは「ロケーション」です。魅力的な主人公と、そのバディ(相棒)が登場し、お店、ご当地、観光地…などなど「ロケーション」を背景とした物語を募集します。
・放課後の学校だけが、私たちの居場所だった――二人の少女が互いを唯一無二の相棒として学校生活をサバイブする!
・スーパーは激戦場?!お惣菜係のおばちゃんと、品出し係の青年は様々な災難に立ち向かう。
・アイドルオタクの青年がライブ遠征先で知り合った謎の美少年は実は女装地下アイドル!二人に芽生える不思議な友情。
など、主人公がコンビになったロケーション小説をお待ちしています!

※1:受賞者より質問メールを5回まで送信、それぞれに対して編集者より返信を5回です。質問数に制限はありません。

応募要項
1)主人公に「バディ(相棒)」がいること
2)「ロケーション」をテーマにしていること
3)3万字~5万字
※文字数は「文字数カウント(空白・改行を除く)」を参考にしてください。
4)公開状態の作品

※上記4項目に沿っていない作品は選考外となります。

※非公開作品は審査対象外となります。

※お一人様、何作品でも応募頂くことが可能です。

※新作推奨ですが、過去作・他の賞で落選した作品を上記の形に再構成して応募戴くのも歓迎です。

※完結している必要はありませんが、〆切時点での完成度も選考の対象となります。

※エブリスタ内の他公式イベント(重複応募を許容しているイベント)との重複応募も可能です。

※エブリスタ内の他公式イベントで過去に受賞した作品で、書籍化などの予定のないものは応募可能です。他サイト等の文学賞で過去に受賞した作品は選考対象外とします。

※シリーズ設定されている作品も、エントリーされた話のみが対象となります。

※エブリスタ上での有料作品・無料作品のどちらでも応募可能です。

※応募締切り後の作品編集可。 (ただし、審査は、締め切り時点2018年5月31日(木)23:59:59のデータで行います。)

今後のスケジュール
第3回:バディ小説 テーマ「キーアイテム」2018年7月2日(月)~2018年9月30日(日)募集

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