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新星ファンタジーコンテスト「雑草魂」
 古典的なファンタジーは貴種流離譚が主流だったし、昨今は転生チートものが一大ブームとなるなど、従来、ファンタジーと雑草魂はあまり交わらないジャンルだった。しかし今や転生したらゴブリンだった、モブキャラだったはもはや当たり前、そのものズバリ、転生したら雑草だったもあるに違いないと事前予想。ところが読み始めてみると、転生ものもひねりを加えた作品が多く、いい意味で予想は外れた。  踏まれても踏まれても頭をもたげる雑草、踏まれるのを前提として賢く立ち回り生き延びる順応型、数を増やすことで勝者となる雑草。いろいろな解釈があるが、コンパクトに表現するのが難しかったのか、テーマ的には未消化な作品が多かった。さて、そこで大賞なのだが。ファンタジーなのだから、雑草に魂があってもいいんです。雑草魂などという言葉は、雑草に対して失礼でしたと謝りたくなるような、意表をついた設定の雑草ロードノベル。ぜひお読みいただきたい。 (三村美衣)

大賞

主人公はセリとなずな。土を操る魔法使いと剣士のバディものロードノベルかと思いきや、このふたり、そういう名前の人物ではなく、どうやら本当に正月に食べる七草粥の材料の草であることがわかりはじめる。物語の舞台は、食物連鎖の頂点に巨大な蟲が君臨し、人間の集落が蟲や森に浸食された世界。この雰囲気のある独特の世界観も面白いが、なにより土を離れて旅をする草を「根なし草」と呼ぶ言葉のセンスが秀逸だ。蟲に齧られまくる弱い草であるはずのふたりの視点から、旅先で出会う不思議な生命や、人々の愚かさが描かれる。驚きの、雑草による、雑草魂の物語。物語のテンションが変わったところで中断しているので、早く続きが読みたい!

準大賞

王太子妃候補として全寮制の学園に転入することになった公爵令嬢エリザベス。実は彼女は公爵の実子ではなく、貧民窟で育った花売りだった。王太子妃になんてなれるわけがないと考える彼女は、必死に嫌われようとするのだが、しかし実は王太子とは幼い頃に一度だけ、会ったことがあり……。王道の展開ながら、エリザベスが毒草おたくの、雑草メンタルというところがミソ。目立たず消えるつもりが、正義感と行動力が邪魔をして事件に巻き込まれ、どんどん深みに嵌ってしまう姿が、お気の毒というよりも自業自得な感じで楽しい。コミカルなロマンスにサスペンス要素を絡め、王国が抱える社会問題にも踏み込んでおり、読み応えがあります。

入賞

聖女の候補者として集められた4人の少女。3人は特化型の天才であり、互いをライバルと見なし、牽制しあっていたが、ひとりナディアだけはこれといって秀でたところもなく、おちこぼれ扱いだった。ところがある日、神官が聖女の最有力候補はバランス型だと漏らしたために、4人の間の空気が劇的に変化する。努力家ではあるが、自分なんてという雑草根性に邪魔され、それまで前に出ようとしなかったナディア。プライドに邪魔されない彼女だから、自分を卑下することもやめ、正当に評価することで、視野が一気に広がる。その努力型による逆転劇が気持ち良い。

佳作

熱中症で死亡し、異世界に転生させられた羊紳太郎。気が付けば魔王城の真ん前というハードな展開。ところが相対した魔王が望んだのは、闘いではなく平和だった。それから1000年。魔王との約束を胸に、一族のもとで働きつづける紳太郎。不死という以外に特殊な能力を持たない彼が、生前の世界と長い時間に身に着けた知識と技術を駆使して魔族の平和を護ろうとする。魔族の変遷を見守る人間という、スケールの大きな逆転構図が面白い。
1000年前に邪神を倒した英雄の再来と期待を集めながら、復活した邪神軍との戦いに敗れた勇者マルク。命はとりとめたものの、再び立てるようになった時には呪いによって力を失い、勇者の称号も別の者の手に渡っていた。という逆境からの、再スタートの物語。マルクの失敗により様々な人が何かを失い、それを感じているが故にすっかり捩れてしまった彼。しかし力を無くしたからこそ見えることもある。まだ物語は始まったところだが、彼が戦う力を取り戻すのか、戻らないのか、どんな生き方を選ぶのか、先の展開が楽しみだ。
田舎出身の土着聖女のミーシャは、容姿も能力もぱっとしない。毎日身を粉にしポーションを詰め続けて15年、アラサーとなった彼女の前に、若くて美しい転生聖女が現れ……。アラサー女性の悲哀を異世界に移植し、コミカルに脚色した作品。聖女という言葉のイメージと雑草のごとき現実の落差、さらにヒロインの自虐性格で笑わせる。転生者によってこちらの世界の文化が伝わっているため、中途半端に頭でっかちな登場人物たちが、自分の運命にはループが仕掛けられているのではないかと疑ったり、畳み掛けるような展開も上手い。
植物界の女王とも言うべき人喰い植物と、それに相対する、社会の底辺で生きる雑草のような私立探偵。彼が総督府から受けた仕事は、謎の連続行方不明事件の捜査だった。開拓間もない植民地の、不安定で猥雑な社会を背景に、サイコパスだとか化け物植物だとか、キッチュでカラフルなゲテモノ感覚を同居させた探偵小説。「リトル・ショップ・オブ・ホラー」+《幽霊狩人カーナッキ》な世界で読者を楽しませるサービス精神溢れる作品。
ダンジョンに落ちているアイテムや、死んだ冒険者の装備を拾い、それを商店に売る“落穂拾い”。14歳のビリーは、冒険者から“ダンジョン乞食”と蔑まれながらも、幼い妹を養うために日々ダンジョンの上層に潜り、アイテムを拾い集めて生きてきた。ところがある日、妹が毒虫に刺されてしまった。医者に見せない限り余命3日。ビリーは医療費を稼ぐため、初めて下層のボスを目指す。レベル1から始めてボスを倒すまでの、3日間の冒険の緊張と興奮が、ヒリヒリと伝わってくる。迫真のゲーム世界小説。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2022年9月5日(月) 12:00:00 ~ 2022年11月6日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2023年1月下旬頃予定
募集テーマ
第9回目のテーマは「雑草魂」です。
・魔族の襲撃で壊滅し、人が住まなくなった町。生き残りの少年は成長し、街の復興のため立ち上がる。 ・悪役令嬢に転生したけど、すでに追放された後!?筋書きも何もないけど、逞しく生きてやろうじゃない! ・災いの子と預言され、危険な魔物の住む森に捨てられた少年。身一つで生き延びた彼は、復讐を決意する……。
逆境でもたくましく生きる「雑草魂」の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等に応募中の作品は判明した時点で応募が無効となります。
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