3年前、高砂仄香は事故で亡くなった調香師の祖母から工房を受け継いだ。そこには稀少な香木や入手困難な香料が数多く残されており、仄香は『相手が好む香り』を作ることができた。ある日、隠されていた古い香水を見つけた彼女は、幼馴染みの長谷川郁とともに香水の謎を調べていく。すると、その香水には人の心を操ることのできる不思議な力があった。ケースに描かれた『十戒』、妖しい香りに惹かれて現れるモノとは……!?学園幻想ミステリー。

警察官で所属を“音楽隊で楽器を拭く係”だという男・松永敬志。彼が想いを寄せる幼なじみの笹倉優衣香は、差出人の書かれていない葉書を心待ちにしている。15歳の夏から敬志の想いを受け取り続けて22年、それでも優衣香は、危険が伴う警察官という職に就く彼の、恋人になる事も奥さんになる事も拒んでいた。半年ぶりに届いたその葉書は2人の新たな人生の始まりだったが、敬志は彼女の知らない顔を知り――。純愛ラブコメディ！

日本が唯一所有する、宙に浮かぶ領土である天空都市『彩雲』。かつて憧れのリゾート地であったその理想郷は数十年前、天空鬼と呼ばれる機械を食い散らす異形が現れて以来、孤島と化していた。そして現在、彩雲には地上へ人を送り届けてくれるという運び屋の噂があった。2人組の運び屋『藍銅鉱(アズライト)』は、天空都市からその身一つで飛び降り、天空鬼と戦いながら地上を目指す――。空で戦う凹凸コンビのアクションSF！

県内随一の進学校に通う高校3年生の早瀬空は、かつて抱いた作詞家という夢から目を背け、大学進学を求められる環境に苦悩していた。空が心酔する、謎に包まれたアーティスト『無音』の音楽を屋上で聴いていると、常に首位を独占する才色兼備の優等生・高嶺咲夜が、屋上のフェンスの外側に立っている姿を目撃。住んでいる世界が違うと色眼鏡で見ていた彼女と向き合い、2人は『本当の想い』で繋がる――。未完成にただ進んでいく音楽青春譚。

まだ戦争が対岸の火事と思っている昭和前期の日本。ラヂオを作る会社に勤めている新井和仁は、自己嫌悪に鬱々とする日々を送っていた。そんな時、雨宿りに立ち寄った本屋の軒先で、店から出てきた美女・望月甲斐に一目惚れする。彼女に会いたい一心で、仕事帰りに足繁く店へ通う和仁は、いつしか甲斐が持つ秘密に触れてしまう。過去に苦しめられる彼女を救うべく、謎に挑もうとする和仁だったが、その先には軍部の影がちらついており――。国の命運を占う恋と裏切りの歴史ミステリー。

芭蕉扇を巡る戦いで、孫悟空と天界・仏界からこてんぱんにされた牛魔王。復讐の為、彼は3つの新術を開発した。狙われたのは『西遊記』とは異なる別世界……歴史上に実在する玄奘だった。求法の旅を開始してして間もない玄奘は慧琳を人質に脅され、沙羅に攫われ肉を喰われかける。そこに『西遊記』の世界からやって来た悟空が現れ、玄奘を助けるのだが……？　唐に帰還した玄奘が帝に献上した地誌『大唐西域記』×『西遊記』の中華幻想コメディ！

超名門貴族にして、大陸一の資産家であるダンドロ公爵家の娘、ジェルヴェーズ。彼女は王宮にて、マイヤール王国唯一の王子・ウォルトに「喜ぶがよい！わたしの婚約者にしてやる！」と一方的な婚約宣言をされた挙句、名前を間違えられる。それゆえ婚約は不成立であったが、絶対に結婚を阻止したい彼女のポケットに魔法王国の呪われた王子・ライナルトが現れる。ジェルヴェーズは彼を助け、古の悪しき魔法に立ち向かう――。完全無欠令嬢のドタバタファンタジー。

2年間付き合っている恋人・和哉が、元カノである紗奈を2週間もの間、部屋に泊めていたことを知った綾花。最近部屋に入れてくれなかったし、不自然な行動が多かった憑りつかれてからか、やっぱりという気持ちが強かった。「放っておけなかった」と言い訳を並べる和哉に不信感を抱きつつも、別れを選べない綾花の前に、紗奈が現れる。そして綾花は、紗奈の不思議な魅力に憑りつかれていき――。どうしようもない相手でも、好きをやめるって難しい。切ないトライアングルラブ。

王都で聖女の再臨と囁かれていた少女・ラヴィーリア。彼女はその実、公爵家三女としての体裁を取り繕うのがやっとのただの女の子だった。幼い頃からの婚約者・カルナと共に過ごす時だけ心から本当に笑い合えていた。しかし、彼女はその弱さから、流され、嘘をつき、不義を犯してしまう。彼の傍にどうしても居たかったラヴィーリアは、首輪をつけられ侍女として仕えることに……。自身の弱さと決別し、婚約者との再生を願う恋愛ファンタジー。

7年前に使用人の男と共に吾妻橋で亡くなった令嬢・田宮緋鶴。彼女は死後、鬼女と化したという噂話が蔓延っていた。そんな緋鶴の手紙で、男女8名が浅草の喫茶店「伊江須堕泥」に呼び出される。彼らはみな、緋鶴に縁する田宮家の者や記者などであった。そこに現れた謎のマント姿のバンカラ男・コウタロウ。彼はこの事件に怪異が関わっているといい、自分は『あとづけ』のために来たという――。事件の“あと”を描いた大正ホラー。