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次に読みたいファンタジーコンテスト「お仕事」
講評者の三村美衣氏からのコメント =====  お店ものになるとどうしても日常のミステリ系や癒し系で似通った展開になりがちだし、珍しい仕事を短期間で仕込んだり、想像するのが難しいこともあり、今回はオリジナリティという意味ではやや低調だった。魔法は職人と相性がいいと思うし、測量士や地図職人や辞書編纂者なども旅の理由になる。これを機会にいろんな職業や技術に興味を持ち、技術や素材や仕組みなどの知識を深めれば、それが得意技となって今後の執筆に役にたつことだろう。  入選に選んだ3作の仕事は、回顧録の執筆者、死者がよみがえってくる裂け目の見張り、花薬師で、それぞれがどんな仕事をしているのか興味が湧いてくる。選にはもれたが、にのい・しち『メテオライト〈晴れ、ときどき隕石落下? 綺羅星堂の流星打ち!〉』は、隕石をハンマーで撃ち返して街の安全を守る少年の成長物語。隕石を打ち返すというイメージそのものはオリジナルではなく、街を本当に守れるのかという有用さに若干疑問はあるが、街の情景や彼らの動きの映像的な楽しさは群を抜いていた。また梨野海星(自粛)『補完のお話』は、進行中の『偽人デリヘル嬢の送迎者』のスピンオフ。生贄付きで悪魔召喚をデリバリーするドライバーという設定はたいへん面白いのだが、本編なしで読むと些か説明不足。ぜひ本編の方からお読みいただきたい。 ===== 受賞作品への選評や見どころを一部掲載! また、エブリスタのメディアmonokakiにて、講評者の三村美衣氏よる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中です! 第5回「今が狙い目!?「お仕事ファンタジー」を書いてみよう」も、ぜひ読んでみてください。 ※選評は登録されたメールアドレスへ近日中にお送りします。 ※SNSアカウントで会員登録されている場合、エブリスタトップページ上部「現在、このアカウントは仮登録の状態です。本登録はこちら」より、メールアドレスの設定をお願い致します。

大賞

回顧録製作者のリアンノンは聖王から呼び出しを受ける。なんと、鉱山で捕らえた鉱石竜が、貧窮院で死んだ鉱夫の回顧録に不満を表し、書き直しを要求しているというのだ……。人は死後、生前の行いの善悪によって、次の転生先が決定される。その判断の拠り所となるのが、故人の生涯を客観的に描いた『回顧録』であり、その作成は精霊教会の大きな収入源となっていた。回顧録作成には故人の地位や富が大きく関わり、司祭の回顧録が分厚くなり、無名の鉱夫のものが薄っぺらい事務的なものとなるのは致し方ないことだった。竜はリアンノンを鉱夫が生きた場所へと案内、彼の人生について語り始める。人と竜の友情、そして回顧録作成という職業への真摯な思いが綴られる。

準大賞

21世紀のはじめ。隕石が地表に激突し、地面には裂け目ができ、その裂け目から死んだはずの人が現れる現象が始まった。死者は最初はぼんやりとしているが、やがて意思を持ち生前の記憶も蘇る。しかしそれは決して人ではなく、撃たれると砂のように崩れる。現象を恐れた人々は、裂け目の縁に見張り台を建て狙撃者を置いた。そしてそこでは、年老いた狙撃者が1人で、よみがえりを黙々と撃ち殺し続けていた。そこにある日、新兵がやってくる。狙撃に疑問を持つ新兵を試すように、裂け目は彼の弟をよみがえらせた……。裂け目がもたらす得体のしれない現象と、それに向き合う老兵と新兵の緊張と恐怖を描いたダークファンタジー。全てが闇に飲み込まれ真実が見えなくなる混沌とした結末、考えれば考えるほど深みに嵌っていく後味の悪さがたいへん面白い。

入賞

たとえば「スミレ」を飲めば「小さな幸せ」が手に入り、「冬桜」を飲めば「冷静」になれるというように、服用した人に花言葉そのままの効果をもたらす「花薬」。花薬師のマリーとユラが営む小さなお店には、様々な悩みを抱える人々が訪れる……。生真面目なユラと大らかなマリーは、それぞれの方法で客の心に寄り添い、もつれた糸を解きほぐして行く。癒し系お店ものの王道的展開だが、満月を見て流した涙と花で作る「花薬」というアイデアがなんともロマンチックだ。

佳作

使用者の想いがこもり、付喪神のようなものになってしまった愛用品を引き取る清め屋。店主の健次郎はものぐさな性格にもかかわらず、おせっかいな助手のせいで客の人生に関わることになってしまうのだった……。不思議なお店を舞台にした癒し系連作短編。オーソドックスな展開だが、清め屋というネーミングセンスと助手のキャラクターのかわいさで読ませる。
灯台守の仕事に一生を捧げた老人の想いが遺された犬に受け継がれ、そしてある嵐の夜、多くの人々の命を救う。ささやかな奇跡の物語。オーソドックスな物語だが、物語の舞台に、かつては夜間飛行の目印であり、技術の進歩によって打ち捨てられた航空灯台を選んだことで読者に興味をもたせることに成功している。
もとの文章が線で消された赤字の訂正だけではなく、短い挿入や、ときには吹き出しの長文訂正などが書き込まれた原稿。ベテランアナウンサーのその男性には、そんな錯綜とした原稿が動く動画のように見えており、戸惑うことなく、正確に読めていた。ところがある日、原稿用紙で指先を切ったことが発端となり、彼は原稿から、書かれているはずのない未来予測を読み取れるようになってしまった……。筆が達者で、原稿の見え方や、家族との関係の冷え切った描写も巧み。

募集概要

ファンタジー書評家「三村美衣氏」&物書きのためのメディア「monokaki」とコラボしてお送りする 「次に読みたいファンタジーコンテスト」 面白いファンタジーとは何かを探求しつつ、新しいファンタジー作品をどんどん発掘していきます! 【募集テーマ】 第六回目のテーマは「お仕事」です。 ★ベテラン鍛冶師の元に舞い込んだ、前代未聞の依頼とは? ★魔法薬の素材採集に出かけた薬師が見つけたのは、新種の植物! ★魔獣ブリーダーと魔獣たちの毎日は、涙あり笑いありトラブルあり!? 「お仕事」の要素が入っていれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 ページをめくる手が止まらなくなるような、ワクワクするファンタジー小説をお待ちしています。 また、あわせてエブリスタのメディアmonokakiにて、三村さんによる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中! 第5回は「今が狙い目!?「お仕事ファンタジー」を書いてみよう」です。 「産業やお金の流れとは?」「個性的な仕事って?」といった、具体的なお悩みに答えます。 めざせ、テンプレ脱出!ぜひこちらも参考にしてください。

講評者プロフィール

三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SFの小説賞の審査員を歴任。 現在も、創元ファンタジイ新人賞の最終選考を務める。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)など。 2018年10月より、monokakiにて、ファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。

スケジュール

・募集期間: 2019年2月4日(月)17:00:00 ~ 2019年4月7日(日)23: 59: 59 ・最終結果発表: 2019年6月上旬予定

大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。

応募要項

・文字数は5,000文字以上 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品 並びにエブリスタ内の公式イベント及び他サービス等の投稿イベントで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。

コンテストの注意事項(必読)