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新星ファンタジーコンテスト「女性主人公」
 今回のお題は女性主人公という、世の中の半分近くが該当するような緩いものだが、架空要素があっても、ファンタジーとしての面白さと、物語の面白さの擦り合わせが、うまくできていない作品が多かったように思う。後宮ものや悪役令嬢ものに、神や世界のような大きな要素を導入すると、逆に物語の拮抗を崩してしまう。  後宮を舞台にした日常系のミステリや陰謀劇もいいのだが、ことファンタジーとなると、白川紺子『後宮の烏』(集英社オレンジ文庫)の終盤のような大掛かり展開が欲しくなる。お題の幅が広すぎて逆に選書が難しいのだが、女性主人公のファンタジーとして、庵野ゆき『水使いの森』三部作(創元推理文庫)をおすすめしておく。 (三村美衣)

大賞

初恋の相手とのデートの最中に事故死した女子大生が、再びめぐり会える運命を信じて、記憶を残したまま転生。異世界で恋人の役に立ちたいと考えた彼女は、ネガティブステータスの【短命】を選び、それと引き換えに治癒や鑑定眼などの適正も手に入れ、そして……。転生した彼女は、冒険者ギルドに集まる人々の優しさに育まれながら成長する。やがて魔王の出現が予見され、勇者パーティが結成され、という展開は王道ながら、キャラクターの魅力、話運びの上手さでぐいぐいと読者を引き込む。果たして彼女は初恋の相手と再び会えるのか、短命というステータスを背負いながら幸福を手にすることはできるのかという疑問がページをめくらせ、やがて予想もしなかった大きな物語へと押し出される。結末も見事だ。

準大賞

魔法が誰でも使える武器となり、戦の中心が剣から魔法へと移行しようという時代。聖王の親友でもあった騎士団長が、他国への内通の罪で処刑され、騎士団は名実共に国防の要としての地位を失った。それから10年。父の無実を信じるアイシャは、騎士となり、騎士団にかつての栄光を取り戻そうと努力する。魔法とテクノロジーの混ざり具合が絶妙で、視覚的描写がかっこいい。アイシャをとりまく男性たちがいずれもクセが強く魅力的。逆ハーパターンながら、友情の尊さが印象に強く残る。

入賞

住宅機器メーカーに勤める女の子が、竜王の番(つがい)として竜の国に嫁ぎ竜王の溺愛を受ける、玉の輿異種婚姻譚。日常から非日常への移行、異文化ギャップ、さらには高飛車なライバルの登場に、陰謀劇。王道のパターンをきっちり抑えた、少女小説的わくわく展開で、夢のあるラブストーリーに仕上がっている。天上界の描写も素敵だが、終盤に明かされる設定に個性がありファンタジーとしても面白い。

佳作

鴨川デルタからもう一つの京都に迷い込んだヒロインが、就職先の主である、頭の上にぴょこんと尖り耳のあるイケメンから嫁になれと迫られる、異種婚姻譚もの。苦労人のヒロインの状況や、京都について目にする鴨川デルタの情景描写が丁寧で、そのままヒロインと共に異界へとするりと入り込める。異国風の美少女に変化する兎のキャラもかわいく、設定も楽し気。シリーズもののプロローグといった印象は否めないが、このまま京都という舞台設定の力を存分に引き出していければ面白いシリーズになるだろう。
聖女として生まれたがために、自我を殺し、身を削り、ただひたすらに民と国のために尽くすイザベラ。しかし聖女に対する人々の要求は留まるところを知らず、肉体的にも精神的にもサンドバッグ状態。追い詰められた彼女の前に、ある日魔王が現れ、彼女を過酷な運命から救いだす。という王道展開からの溺愛系が始まるのかと思いきや、彼女の聖女としての本質は変わることなく、自ら苦境へと追い込んでいくかのような展開が続くところが読みどころ。生真面目なイザベラと、ぱっと見は軽薄なアザゼルのバランスもよく、思わず二人を応援したくなる。未完だが、先の展開が気になる作品。
名家の娘ながら、恋より学問が好きで、結婚願望皆無の杏樹。姉の女官として入った後宮で、皇帝の記録係・右筆妃にとりたてられ、皇帝の寵妃と噂されるのだが……。連続変死事件が続くきな臭い後宮を舞台に、杏樹を溺愛する姉の淑妃、十歳で国試を一位通過した内侍省長官・青、食えない皇帝陛下などなど、癖の強いキャラをはじめ、様々な人々の思惑が交錯する。それぞれの事件に奥行きがあり、事件の真相、明かされる裏事情が面白い。良質なエンターテイメントに仕上がっている。
男装の占い師と、皇帝を主人公に描く、中華風後宮陰謀劇。皇帝にかけられた呪いと、連絡を絶った幼馴染の行方をめぐる二つの謎が、一つの物語へと収束する。後宮にこっそり出入りする謎めいた占い師、という設定が面白く、また後宮で生きる女性たちのキャラが生き生きと描けているので、ちょっともったいない気もするが、恋愛小説としてコンパクトに纏めた手腕を評価したい。
国王と国の宰相を務める父が外遊で不在の隙に、公爵令嬢ブランシュは婚約者である王太子から、彼の恋人である男爵令嬢に危害を加えたと訴えられ、茶番のような裁判で国外追放を言い渡される。ところが、全ては馬鹿王太子の勘違いであり、ブランシュと公爵の加護を失った国は恐ろしい勢いで傾いていく。その様子が多視点から描かれるのだが、この冷淡さがなんとも小気味よい。悪役令嬢リベンジパターンだが、構成の巧みさが光る。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2023年3月6日(月) 12:00:00 ~ 2023年5月7日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2023年7月中旬頃予定
募集テーマ
第12回目のテーマは「女性主人公」です。
・公爵令嬢が現代の女子高生に転生!隠しきれぬ気品に、男女問わずファンが増え始めて!? ・死に際の魔王の呪いで女性になってしまった勇者。元に戻る方法を探すため、新たな旅に出る! ・神の贄にされた少女。だが神に気に入られた彼女はその力を利用し、人間への復讐を企てる――。
「女性主人公」が登場すれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等に応募中の作品は判明した時点で応募が無効となります。
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