このコンテストは受付を終了しました

新星ファンタジーコンテスト「チートなし異世界転生」
 チート能力禁止で、ではどうやって個性を出し、読ませるか。努力と忍耐と試行錯誤だ。イレギュラーな転生パターンは極北まで到達している(自動販売機になったりもしたのでまだ限界ではないかもしれない)。王道は前世で得た経験と知識だ。  大賞の『前世は下っ端公務員だったけど今回は侯爵令嬢に転生したので権力使って世直しやります』は税務署員、入賞の蒼衣海子『人外が見えて口だけが取り柄の営業職女(32)が異世界の悪役令嬢に憑依して国に平和をもたらします。』は保険の外交員で、共に前世での職歴を足がかりに、経済から世界を変えていこうとする。国の施策や社会の在り様を変化させようとする大きな物語になっているところが共通する魅力だ。  しかし、異世界が人間だけのものでないなら、たとえば人間と不老不死に近い種族では、社会基盤そのものがまったく異なるかもしれない。みたいなところに踏み込んでみると、まだまだ掘るべき未踏の大地はあるのではないだろうか。 (三村美衣)

大賞

転生前は日本の税務署の徴収官だった女性が、魔法の存在する異世界の公爵令嬢に転生。父と兄が亡くなり家督を継ぐのだが、前世の記憶を思い出したこと以外にはまったく特殊能力を持たない。家柄の良さと、税務署員であった前世の記憶。それだけを武器に、戦争を止め、奴隷を開放し、全ての国民に教育を受ける権利を与え、議会制を目標とする政治改革に乗り出す。理想と勢いが原動力だが、行動の背景には常に経済論理が働いており、物語に一本筋が通っているため、読んでいて気持ちがいい。急激な改革には当然ながら反発も大きく、まだ完結していないが、この先の展開にも期待が持てる。

準大賞

マリー・アントワネットとジャンヌ・ダルク。片や断頭台の露と消え、片や火炙りにされたフランスの歴史上の人物が、フランスに似た異世界で目覚め、出会う。転生などという言葉を知るわけもなく、ここがどこなのか、いつなのかもわからないまま、歴史上のスーパーヒロインが戦禍の只中でバディ関係を結び、故国フランスを目指して歩き出す。ふたりのキャラも、世界の様相も、真実味と独自性が絶妙に同居していて興味を惹く。ふたりをチェスボードのポーンに見立てた進行も謎めいており、やがてクイーンとなるのか、まだ着地点はまったく見えない。描こうとしていることが複雑で、まだ技量が追いついていない部分もあるが、これは傑作になる予感!

入賞

保険営業職の平凡なアラサー女子が悪役令嬢に転生。前世の記憶を取り戻し軌道修正に入る王道展開ながら、営業経験で培った交渉術を駆使して、国を変えるという痛快な展開で読ませる。さらにヒロインに霊媒体質というオプションもつけ、要所要所で土俵入りの関取のごとく豪快に塩を撒く姿が笑いを誘う。そして物語は意外な展開から新章へ。いや、これには意表を突かれました。

佳作

ウイルスの研究者が異世界に転生し、現世での知識を生かした治療師として町の診療所で働きながら、白魔法士としてダンジョンにも潜る、という二足のわらじ生活。転生前の科学と、転生先での魔法というふたつの技術を摺合せることで、問題を解決していく、ロジックと蘊蓄を読ませる、良い意味で頭でっかちな冒険譚。若干ハーレムっぽいパーティ構成ではあるが、「過大評価され、期待されて、失望され」がちという主人公のトラウマも物語に効果的に使われている。
気がついたら白雪姫の継母だったという、悪役令嬢もののバリエーションだが、グリム版の最後で継母は焼けた靴をはかされ、死ぬまで踊らされるという怖いオチもあるし、なによりかわいい白雪姫にひどいことはしたくない。というわけでなんとか回避しようと魔法の鏡に話かけてみるのだが、こいつがまるでチャットAIのようで、うまく意思疎通がとれないというのも可笑しい。小ネタの使い方が巧みで、読むものをクスリとさせる転生コメディ。
料理人であった記憶だけを残していただければ、腕一本で生きていきます、チートなんてズルい能力は不要です! と女神さまの前でかっこつけたはいいが、転生した先はリアルな中世西欧風異世界。農民に産まれたら最後、畑を耕すだけで一生を終えるしかなく、料理をしようにも「さしすせそ」の中で家に存在するのは「す」のみ。塩すらない「詰んだ」としかいいようのない状況から、それでも料理人を志すハードモードな異世界グルメもの。都合の良い異世界ものへのツッコミを全て文字化してみたら、絶望しか残りませんと言わんばかりの設定がなんとも可笑しい。冒頭だけなのがもったいないので、ぜひこの続きを!
憧れの上司と結ばれ、専業主婦となった希海。しかし夫とはすれ違いが続き、子どもも授からず、満たされない日々を送る主婦が、異世界での経験から自己を回復する話、と丸められないこともないのだが、一見癒し系に見えて、異世界が勇者に求めることが明かされる中盤からは、ダークな展開が続く。女は子供を産む道具とみなす世の風潮に対する逆襲とも読めるエピローグを、どう受け止めるかで作品の評価が分かれるかもしれない。
ホームレスから歌舞伎町のナンバーワン・ホストとなった道行。それまでいた店が渋谷で開店する2号店の店主に抜擢され、自分の城を築こうとした矢先に、前に勤めていた会社の上司のやっかみから殺害されてしまう。こうして異世界に転生した彼は、ホストクラブという概念すらない土地で、一から店を立ち上げたのだが……。ホストもお客も人外ばかりで美醜の感覚も異なり、この世界のイケメン・ナンバーワンはライオンの顔をした獣人。お客様のなかには勇者や魔王もいるという設定がとにかく面白いので、もっとエピソードを増やして欲しい!
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞者には三村美衣氏からの選評と個別アドバイスに加え、創作に役立つ書籍を贈呈! あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2024年3月4日(月) 12:00:00 ~ 2024年5月6日(月) 27:59:59 ・最終結果発表:2024年7月中旬頃予定
募集テーマ
第18回目のテーマは「チートなし異世界転生」です。
・転生時に神様の不興を買い、スキルも何もない状態で異世界転生させられてしまった!? ・正真正銘のはずれスキル一つで異世界転生。けどなんとか工夫して成り上がりたい! ・悪役令嬢の母に転生。没落回避のため娘を良い子に育てたいけど、子育てなんてしたことない!
「チートなし異世界転生」の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍3冊 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評
※日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」につきまして、受賞時にご所望のタイトルをお伺いします。 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等への重複応募が確認された場合、応募取消しになる場合があります。
メールアドレスの受信設定について
選評の送付や書籍化の打診は、エブリスタに登録されたメールアドレス宛にご連絡いたします。迷惑メール防止の為にドメイン指定受信の設定をされている場合、メールが正しく届かないことがございますので、「@estar.jp」を受信できるよう設定して下さい。
応募の辞退について
応募期間中であれば、作品管理から応募の辞退が可能です。(操作手順はこちら) 締切後の応募辞退は原則として出来ませんので、ご応募の際はご注意ください。

コンテストの注意事項(必読)