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新星ファンタジーコンテスト「ロマンスファンタジー」
 現代社会では描けない障壁を持ち込めるので、ロマンスとファンタジーの組み合わせは相性が良い。ところが短篇で、となると一気に難しくなってしまう。特殊な状況を設定したうえで、ふたりの出会いからはじめ、問題を乗り越えてハッピーエンドまでを描く、という長編ロマンスの定型パターンを短篇用に短くするだけでは、シノプシスのような食い足りない作品になってしまいがちだ。  ファンタジーであれば、たとえば世界や国の滅びのような極限の状況を短篇の中に落としこむことも可能だ。そんな追いつめられた状況、バッドエンドの一歩手前からはじめ、愛をトリガーにした緊張感あふれる作品だって描ける。短篇は楽しくて心地よいだけでは、なかなか心に残らない。短篇という枠と、ファンタジーという武器で出来ることはなにか、いろいろ模索してみてください。 (三村美衣)

大賞

魔物が跋扈する秘境で育った貧乏子爵令嬢ミラ。王都の学園に進学した婚約者のために、無理をして旅費を作り出向いた卒業記念舞踏会で、ミラはその婚約者から手酷い裏切りを受ける。そんな彼女に騎士のアネスが興味を持ち、領地まで護衛を買って出てくれたのだが……。裏切りからの新たな出会いを描いた王道のロマンス小説。冒頭のミラの心の動きを追いながら、読者を異世界の舞踏会へと誘いこむ筆運びが見事だ。さらに物語が王都から辺境へと舞台を移すと物語は一変、そこまでの印象を良い意味で裏切り、魅力溢れるミラの本当の姿が現れる。この辺境での危険がいっぱいなスローライフっぷりも楽しく、読後感も爽快だ。

準大賞

継母と義理の妹によって館の一室に幽閉され、虐待されていたニーナに舞い込んだ婚姻話は、加虐性癖がある残虐な辺境伯アイスブルグ家に嫁ぐという人身御供同然のものだった。ところが実際にニーナに相対したアイスブルグ伯フランツはとても優しい人物で、なぜかニーナが家で虐待を受けていたことを知っていた。残虐な氷の伯爵と、継母に虐待を受ける姫君の結婚というお伽噺風の世界だが、虐待の描写はなかなかシビアで物語全体に独特の緊張感がある。フランツの正体も驚きではあったが、さらにそこからロマンチックなおとぎ話的結末へと向かう展開が素敵だ。

入賞

革命軍を支え続けた老将は若い総大将に自分の娘を託して戦死、託された総大将・思文は新たな皇帝となり、約束通り娘の翠香を後宮に迎える。しかし翠香は、父を見殺しにした思文を敵とみなし、その生命を狙っているという掴みがいい。なにより戦場で父親が思文に語る娘――戦いに赴く父に勢いのある達筆で「ご武運」と書いて送る、文武両道(やや武より)に秀でた行き遅れの娘の姿に俄然興味がわく。それが「傾国の美女」とくればなおさらだ。でもなぜそんな娘が行き遅れてしまったのか。父はなぜ「側室」を望んだのか。やがて明かされるその理由、そしてそれ故の翠香の衝動が強く胸に響く。
話の流れはタイトルにすべてある通りなのだが、ヒロインが喋れないのは、母親がお転婆な娘にうっかり(?)呪いをかけてしまったのが理由。結婚によって解かれる呪いだったために商家に嫁いだあとは、呪いがとけて超ポジティブな性格が前面にでてくる。大賞を受賞した作品もそうだが、堅実な女性が苦境に追い込まれることで逆に自分を開放、伸び伸びとした天然っぷりを発揮しはじめ、ロマンスも成就させるというハッピーで爽快な物語が上手い。読後感の良さが、もっと続きを読みたい、という気にさせてくれる。

佳作

ある日、いきなり家のなかに現れた不法侵入者は、にこやかな笑顔で「始めまして、私はバンパイアです」と自己紹介をし……。ちょっとシュールな出会いからはじまる、女子高生とヴァンパイアのラブストーリー。棺桶で眠るし、血は吸うけど、吸血鬼にもいろいろ個性がある。日中にも動けるし、にんにくだって十字架だって平気というけっこう無敵なヴァンパイアに、ヒロインの心がどんどん傾き、ほかの人間の血を吸うことに嫉妬心を覚えはじめる心の変化と、ハッピーエンドにたどり着く仕掛けが読みどころ。
北には人間の帝国、南には魔族の王国がある大陸を舞台に、和平交渉の人質として国境沿いに作られた館で共に暮らすことになった二人、皇帝の孫娘・アナスタシアと魔族の貴族・ザカーリ。アナスタシアは、人間は魔族と呼んでいるが、環境の違いに適応しただけの人間同士であり、対立は互いの偏見故だと語り、まったく臆することなくザカーリに相対するのだが、やがて彼女に課せられた使命と秘密が明らかになり、ふたりは魔族の国へと逃亡する。しっかりした世界観、達者な筆使い、細やかな人物造詣で描く、異種族間恋愛もの。ヒロインのキャラクターが素晴らしい、完成度の高い作品。
人間と人外の者たちがそれぞれの領域を侵さないという契約を交わした世界。妖怪から人間を守る破妖の家に生まれながら、破妖の力のない娘・咲。家族からも蔑まれて育った彼女に、居場所と役割を与えてくれたのは、人ならざるものたちだった。妖と人間の棲み分け、それに命名の魔法を扱った癒し系のファンタジー。ジブリアニメを彷彿とさせるようなイマジネーションや絵的喚起力を、言葉で表現しようとした作品。朧と呼ばれる小さなもやもやしたものが空にあがっていくシーンがとても美しい。
一方的な婚約破棄からの悲嘆に暮れる一週間をリプレイする貴族令嬢リリア。記憶があっても別れを告げられる朝からではいかんともし難く、98回も繰り返された別れに疲れ果てた彼女は、99回目に開き直る。さばさばと別れて、好き勝手な一週間を送ることにするが、それが彼女に新たな出会いをもたらす。どうせまた巻き戻されちゃうんでしょ、という達観のもとでの彼女の振る舞いは実に爽快。男に併せつづけてきた女性の、自己改革とリベンジからのハッピーエンドが楽しい。
生まれつきその身に猛毒を宿しており、触れた者を死に至らしめるため、ずっと座敷牢に幽閉されていた娘・橘花。婚礼が決まり、生まれてはじめて座敷から外にでた彼女。しかしその結婚は蛇神に捧げる生贄を求めてのものであった……。舞台は現代だが、神や妖が人と共存するもうひとつの日本の旧財閥という世界観がなによりも魅力。誰にも触れることのできない身体で生まれ、七日後には生贄になるという絶望的な運命にもかかわらず、はじめて人の役にたてることに救いを見る橘花がけなげで愛おしくなる、じっくり読ませる伝奇ロマン。
国境伯のひとり娘であるグリシェは婿を探していた。国境に接する領地を守り、運営するだけの知力と根性と腕っぷしを求める彼女は、自分と一対一の果たし合いで勝てる男であることを求めていた。しかし求婚者は誰も彼女が求めるだけの腕前はなく、いたずらに時が過ぎていった。実は彼女には忘れ得ぬ初恋の相手がおり、その話を執事にしたところ……。執事と令嬢のロマンスを素直に描いた作品。剣を交える描写からも心が見えるような清廉なグリシェもいいが、彼女のことを守り続けてきた執事・トゥーヤの優しさが素敵すぎて、応援せずにはいらない。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞者には三村美衣氏からの選評と個別アドバイスに加え、創作に役立つ書籍を贈呈! そして、今回はスペシャル版! 本コンテストの受賞作品は、担当がつき、コミカライズされる可能性があります。 「ロマンスファンタジー」をテーマにした短編作品(1〜3万文字)をお待ちしています! あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2024年5月7日(火) 12:00:00 ~ 2024年7月7日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2024年10月中旬頃予定
募集テーマ
第19回目のテーマは「ロマンスファンタジー」です。
・呪いの力を持つからと、幽閉されて育った姫。そんな彼女を“盗み”に泥棒が現れて……? ・実家の神社で祀っている神様に求婚された。しかも元々は、幼い頃に私の方からプロポーズしたらしくて!? ・実家の没落と共に死ぬ運命を繰り返す令嬢。今度こそ家と自分を救うため、玉の輿を目指す!
ロマンスファンタジーの要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・コミカライズ検討 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍3冊 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・コミカライズ検討 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 入賞 1~2作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評
※日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」につきまして、受賞時にご所望のタイトルをお伺いします。 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は1万文字〜3万文字程度。 ・完結推奨 ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等への重複応募が確認された場合、応募取消しになる場合があります。
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コンテストの注意事項(必読)