意図せず周りの人間を魅了し、狂わせる体質を持つ永禮大雅は、19歳にして天涯孤独の身となった。仕事も信用も失い、渋谷の高層ビルから飛び降りようと決意した彼の前に、突如として現れた男・犬山恭祐は飛び降りを止めると、自分をある一族の“末裔”であると言う。そして大雅の能力を見込んで、彼を自身の営む探偵事務所にスカウトしたのだ。家も仕事も無い大雅は結局、恭祐の元に身を寄せることにするのだが――。生活力に欠けた天才×不遇の美青年が送る探偵バディ小説！

東京の下町にあるアトリエ『悠彩堂』の店主であり、絵画修復家でもある桐嶋悠斗の元にある日、メール便が届く。中には一部に傷がついたグスタフ・クリムトの油彩画の写真と、写真に写る絵の修復を依頼したいと書かれた手紙が入っていた。怪しさに満ちた依頼だったが、一億という報酬に釣られ、桐嶋は依頼を受けることに。だがそれこそが桐嶋の家族にまつわる秘密と、ある歴史を紐解くための鍵で――。下町の工房主が挑む、絵画を巡るミステリー。

のんびりした湘南の田舎町・茅ヶ崎で繰り広げられる日常は、普通の街とは一味違う非日常に溢れている。恋愛したい、遊びたい、青春したい！　な茅ヶ崎に住むJK・白浜沙希の一年は、所属する陸上部の活動に打ち込み、勉強して、時々遊んで……の繰り返し。ときにはつらいこともあるけれど、友だちや部活仲間、地域の人たちとのふれあいや、息を呑む素敵な街の風景との出会いが、沙希を日々大きくしてくれた。茅ヶ崎を舞台に描かれる、日常青春群像劇！

生まれつき植物の“声”が聞こえる楓。数年前から春夏の降水量が増えたことで、儚い悲鳴を上げる春の花々の為に、ほぼ毎日、地元の外れにある社を訪れ、水神を祀る祠に「雨を降らす日を減らして欲しい」と祈っていた。するとある大雨の夜、祠に宿る水神だと名乗る声が楓に呼びかけてくる。初めは驚き、戸惑う楓だったが、その水神に呼び名を付け、声だけの“彼”と会話をするようになり……。花の“声”が聞こえる少女と、雲の“声”を聞き雨を降らす古都の水神の、淡い恋物語。

大阪の南船場で小料理屋『ひさご』を長年営む野上静子は、皆から“お静さん”と呼ばれ慕われる、気っ風のいい女将さんだ。そんな彼女の元に、店先の求人を見たという子連れの女性・秋山のぞみがやって来る。いかにも訳ありげな様子に一度は断るが、どうにも親子の事が気になり、結局雇うことを決めた。のぞみは気遣いのできる働き者で、彼女の子ども・胡桃は大変可愛らしく世話を焼いていたが、胡桃の体に沢山の痛々しいアザを見つけ……。心に沁みるヒューマンドラマ。

伏見桃山にある酒造の蔵元に生まれた十和瀬幸弘は、家を出てチェーンのリカーショップで働いていた。妻と実家との板挟み状態だった幸弘だが、妹の菜摘未が元彼で幸弘の旧友・小谷詳吾に「兄を連れてきてほしい」と頼んだことで小谷に誘われ、実家へ赴くことに。小谷は小谷で、幸弘の腹違いの妹・香奈子への思い入れが強く、彼女に会えるのを楽しみにしていた。そして二人が十和瀬家を訪れると、各人の間には複雑な愛欲と情感が渦巻いていて――。京都のお家恋愛譚。

古く人々が残した伝統を今もなお守り続ける京の都・京都。そんな日本古来のつややかな地に、立花ヒイコは中学の修学旅行ぶりにやって来た。実家暮らし歴＝年齢で、三十路独身ながら異動辞令を受けてしまったヒイコは、異界の地で初めての一人暮らしをすることに。事前にリサーチしたはいいものの、襲い掛かる様々な手続きや京都人の文化に圧倒されながら、ドキドキとわくわくが詰まった日常を送っていく――。ゆるゆる京都コメディ。

京都の寺で生まれ育った大学生・川之内祈は、大学の友人に誘われ夜の山に月食を見に行くことに。たまたまその場に居合わせた高校からの同級生・蔵橋晴華と、後で待ち合わせをして山に向かう約束をした祈は、空き時間に図書館を訪れる。そこで彼女は急激な眠気に襲われ、鬼に襲われる夢を見た。それから約束通り二人で山に向かうが、友人が先に山を登り始めたと聞いた晴華は、祈を置いて急いで山へ向かってしまった。嫌な予感がした祈は晴華を追うが――。京都が舞台の青春現代ファンタジー。

ゲイであることをひた隠しにし、エリート街道を突き進んでいた日乃浦旭。ある日、婚約者である上司の娘に男遊びをしている画像を見られてしまい、それが原因で北海道の片田舎に左遷される。到着した日に大寒波が押し寄せ、タクシーが立ち往生してしまったために、仕方なく歩き出した日乃浦だが、猛吹雪の中で足を取られ進めなくなってしまう。島流しにされたことを嘆きながら死を覚悟した彼を、ある男が助けてくれて――。切ないBLストーリー。

小学六年生の滝比由良は世話焼きで、傷ついている子がいたら自分が力になってあげたいと思うような女の子だ。ある日近所にある、“花屋敷”と呼ばれる花が沢山植えてある家に、ひとりのお嬢さまが現れた。その女の子・西園寺麗央は翌日、由良のクラスに転校してくるが、周りを突き放す冷たい言動から孤立してしまう。そんな彼女を放っておけない由良は、遠足の班に麗央を誘い、桃太郎伝説のある犬山を調べることになるが……。心温まる児童青春文学。

翡翠愛好家で、努力して何でも手に入れてきた海野翡翠はしかし、二年前に白血病を患い全てを失ってしまう。奇跡的に寛解し、実家で療養中の彼女はある日、翡翠が流れ着くという新潟県糸魚川市にある翡翠海岸で、何もかもを失くしたおバカ御曹司・岩田光一と出会った。横領の罪を着せられ会社から追い出された彼は、トレジャーハンターになるべく海岸を訪れたという。楽天的な光一と繊細な翡翠。最初は反発し合う二人だが、次第に心を通わせていき――。ヒューマンドラマ。

高校最後の夏、アコースティックギターの弾き語りでストリートライブを目論んでいたカイトと三国ら幼馴染五人は、ある企画を実行することに。その名も“みんなでとわ湖一周楽しいな”、略して“みとな計画”。自転車で永遠湖を二泊三日かけて一周しながら、ストリートライブで日銭を稼ぐというものだ。カイトたちは決行一ヶ月前から練習を重ね、新たな出会いと経験を重ねる。そしていざ旅が始まると、その先には――。音楽と共に駆ける青春ロード譚。

編み物の名手で、高校を中退したばかりのレオは、祖母が編み物友達の集会所として開いた“ニットカフェ”でアルバイトをすることに。そんな祖母の店の隣には身長190cm、全身タトゥーの彫り師・たっちゃんさんが居た。祖母と仲の良い様子のたっちゃんさんに、最初はぎこちなく接していたレオだったが、次第に距離を縮めていった二人は、関門海峡へ旅に出るという約束をする。それは過去の苦しみや後悔を、消失点の向こうに置いてくるための旅だった――。感動のヒューマンドラマ。

旅行会社に勤める24歳のゲイ・桃瀬律は、過去の失恋がトラウマとなり、もう恋愛はしないと心に誓っていた。そんなある日、仕事で訪れた百貨店で、男前だが性格が悪そうな青年とぶつかった。しかもその後、人気の和菓子処『月島屋』でお目当てだった“だいだいもち”の最後の一つを、その青年に奪われてしまう。そんな第一印象最悪な男・月島大介と、運命的な再会を果たした律。彼は月島屋の次男であり、和菓子職人だったのだ。律は月島屋の社員旅行を担当することになるのだが……。旅行会社を舞台に描かれるお仕事BL！