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恋のつぼみ




イスト。





それは、片思いの最上級。



彼に出会ったのは偶然かもしれない。


でも、恋したのは偶然なんかじゃない。










彼を好きになるのは、必然だったんだ。















2

 
 

「……」



C判定か……。


毎日毎日勉強してもなかなか上がらない成績。


と言うよりも、成績は落ちる一方で。


前は、B判定で頑張ろうって思ったのに。





「…はぁー」





大きな溜息を吐きながら塾から自宅までの道をゆっくりと歩く。





外見も駄目なのに、勉強も出来ない――。




なんて、良いところとるところ無さすぎ。










3

 
冬が終わってもう直ぐ春が来る。
なのに、私の心の中は冬のまま―――






―――ビューン!!






私の身体を強い春風が直撃した。






「あっ!!」







春風に持っていかれるように模試の判定の紙がヒラヒラと宙を舞った。







ど、どうしよう!!
取りに行かなくちゃ。





そのまま模試の紙を追いかけるように走り出す。









「…なんだ、これ.
小鳥遊、翔子《タカナシショウコ》…」




模試の紙は、髪の色が明るくて身長の高い見知らぬ人に拾われてしまった。







「あ、あの…」






私の声で振り向く人。




声を掛けたのは自分なのに、その人の顔が見れず地面を見ていた。














4



人の目を見て話すのが苦手。




「そ、それ私のです」





「ふ~ん」





まるで興味なさそうに返ってきた言葉に返すように手を差し出した。





「か、返してください」





なのに、なかなか模試の紙は戻って来ない。




ど、どうしよう……




勇気を振り絞ってチラッと目の前の人の顔を見上げた。







「!!!」





「やっと、見たね」





私の顔を覗き込むようにしている日本人離れした端正な顔立ちの男の人が視界に入り込んだ。






ニコッと笑う男の人を避けるように私の視線は再び地面に逆戻りした。






えっ?



も、もしかしてハーフさん?











5

クスッと笑う声が聞こえた。

でも顔を上げる事が出来なかった。




早く返して欲しい。




「今度、会う時はちゃんと俺の顔見てね」




そう言いながら私の手に模試の紙が戻ってきた。


ゆっくりと顔を上げると、その人は歩き出していた。






あっ!拾ってくれたお礼…――






大きな声で叫ぶことも出来なくて、拾ってくれた人の背中を見ながら小さな声で呟いた。






「ありがとう、ございます」






戻ってきた模試の紙をギュッと握り締めて、拾ってくれた人とは逆方向へと歩き出した。








6

ドアを開けようと手を伸ばすも、そのドアノブは私から逃げるように離れた。




―――ガチャ!




ドアが開くと同時に目の前には、見慣れた顔のお兄ちゃんの姿。




「あれ、どこか行くの?」


「ちょっと用事でな。ご飯一人で大丈夫か?」


「う、うん、大丈夫」



すると、私の頭にお兄ちゃんの大きな手が触れた。



「悪いな。戸締りだけはしっかりしろよ」





二度、頭を撫でるようにして“行ってくる”と言い残して行ってしまった。





「…」




お兄ちゃんや、家族だと普通に会話できる。



でも…――







他の人は、全然駄目なんだ。















7

小さい頃は、普通に会話していた。




でも、あの事件から…―――




頭の中を過ぎる過去の記憶。



「…うっ」


震えだす身体を押さえるように両手で自分を抱きしめた。


思い出したくない。

思い出したくない――。




自分を落ち着かせるように、自分自身に何度も言い聞かせた。







8

事件から逃げるように地元の高校ではなく、一人暮らししているお兄ちゃんの所に居候する形で近くの高校を選んだ。

周りはみんな知らない人―……。


だからか、気分は少し楽だった。


高校に入学して二年。
なのに、友達って言える友達はいない。


というよりも、作らなかったが正しいかもしれない。


友達ごっこは、したくない。


好きでもない話題に、話を合わせて作り笑いして。

何が楽しいの?って思う。









本当の友達だって昔は、いたんだ。



でも――…


本当の友達の裏切りを知ったときの絶望感。



だから、友達なんていらない――…。


















9

翌朝、目が覚めると部屋の外から甘い匂いが漂ってきた。

その匂いに誘われるようにベットから起き上がりリビングに足を進めた。



「起きたか?」


「う、うん。
それよりどうしたのこれ?」


リビングのテーブルには沢山の料理が並んでいることに驚いた。

全く料理が出来ないお兄ちゃんが作れるわけがないと思う。

すると、私が疑問に思った事がお兄ちゃんに伝わったのか、料理をテーブルに置きながら話し出した。



「昨日バイト先で貰った」


バイト先ってモデルの仕事で?
そんな事もあるのかな?




「とりあえず、顔洗って来い」

「わかった!」





お兄ちゃんの指示に従うように私は、リビングから洗面台へと向かった。







10