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小説 野性時代短編コンテスト

選考結果発表
国民的アニメとして親しまれている「ちびまる子ちゃん」の原作者、漫画家のさくらももこさんが、53歳の若さで逝去された。私事で恐縮だが、私がこの漫画を知ったのはテレビアニメが始まる少し前のこと、高校生の時だ。女子の先輩の間で、「面白い漫画がある」と、流行っていたのだ。さくらさんは、漫画のみならず文章にも秀で、多くのエッセイも書きベストセラーを連発した。学生時代に、エッセイのコンクールに応募して思いがけず絶賛を浴びたことがヒントとなり、日常をテーマにした漫画を描き始めたのが、「ちびまる子ちゃん」に繋がった、という。エッセイのコンクールがなければ、「ちびまる子ちゃん」の登場は、もう少し遅かったかもしれない。何が言いたいかというと、今回の短編コンテストも、応募者にとってそんな存在であったら、と思うのだ。今回は残念ながら、手放しで絶賛できる作品には出会えなかったが、こうして応募することが、ひいては今後の人生を、世の中を変えるきっかけになるかもしれない。だからこそ、作品は自分が納得のいくものにしっかり仕上げて、挑んで欲しい。他人に読まれたい、できることならお金を払ってでも読みたいと言われたい。もしそう願うのなら、本コンテストはまたとないチャンスなのだ。がっぷり四つに組む準備はできている。 「小説野性時代」編集長山根隆徳
大賞
初めての、エブリスタと「小説野性時代」とのコラボ企画であったが、残念ながら、「これは!」と思わせる作品との出会いはなかった。既視感があったり、小説としてまだ練れていなかったり、設定にリアリティが無かったりと、やりたいことはわかるのだが……、という惜しい作品が多かった。ベストセラー作家の湊かなえさんは、原稿が書けると声に出して読み、推敲を重ねるという。紙に出力して読み直すことができない場合など、とてもいい方法だと思う。さてそんな中、大賞に選んだ「ノンブルゲーム」は、決して長い作品ではないのだが、文章の巧さと、上質な翻訳文学のようなウィットに富んだところを買った。ゲームの掛け合いのシーンは描写も秀逸だし、説明の加え方も自然である。もちろん不満が無い訳ではない。もっと話を脹らませられたはずだし、姉弟が持っていた文庫本がなぜ「古本のような経年劣化」したものだったのかなど、語られていないことも多い。ふつう、小説の世界で短編小説といえば、四百字換算で四十─六十枚といったところだろうか。もしプロを志向するなら、ぜひ上限の五十枚ギリギリに仕上げた短編で挑戦して欲しい。
準大賞
リーダビリティの高い作品であった。女としての色気を纏い始めたりら姉ちゃんが、主人公である従妹の家に遊びに来たことで、次第に家庭に翳を落とし始める。そんな夏の出来事が、緊張感と不穏な空気感を漂わせながら語られる。りら姉ちゃんの行為はモラルからは外れてしまったが、思考は健康的でさえある。よくまとまっており、長さも感じさせない。もっとも彼女が恋に落ちるほど、叔父が魅力的な男とも思えないといった瑕疵もあるし、後半、成長した主人公と重ねて、さらにその先にある「何か」が見通せたら、もっとよかった。文章力を磨いて欲しい。
入賞
高名な画家のもとに弟子として住み込んだ男が、身分違いと知りながら画家の娘と恋に落ち、駆け落ちする。が、居場所をつきとめた画家の妻は二人に別れるよう迫り、拒んだ娘を殺してしまう。下手人と疑われた男は身を隠すが、男を訪ねてきた画家の勧めで再び筆を持ち、娘を描いた絵によって評判をとる、という昭和初期を舞台にした物語。一人称で綴られ、殆ど台詞なので、小説としての出来は決して良くない。ストーリーも陳腐だし、自己陶酔的な文章は鼻につく。が、この小説を書きたいと願った作者の強い想いを、多としたい。その強い気持ちこそが、創作の何よりの原動力になるからだ。
二十年前、両親の喧嘩の末に中学生だった姉は命を落とした。成長した千秋は姉の仇を討つべく、復讐を目論む。確かにラストのどんでん返しはあっと言わせるものがあるし、ブログ風に書かれた文章も読みやすい。が、そこへ至るストーリーは陳腐だし、そもそもそこまで母は父を陥れるべく策略を巡らさなくてはならなかったのか、いったい覚醒剤をどうやって入手したのかなど、疑問も多い。まだ中学生だった姉を妊娠させた恋人と母の浮気相手が同一人物だった、という設定もご都合主義に過ぎないか。現実世界を舞台にするならリアリティは重要である。綻びが見えた途端、読み手の興は削がれてしまう。ただ、同じ応募者の二作入選には、拍手を贈りたい。
くらげさん、とやや揶揄的に呼ばれながら、畑を耕し育てた作物を周囲に配る近所の老女を通して、ものを貰うということについて、少年だった主人公が自分と家族との関係を踏まえながら考えを深めていく。くらげさんは、なぜ迷惑がられながら野菜を配ったのか? もっとも、「通りかかった人を捕まえては、野菜をほんの少し分けてくれる」という設定のわりに、結構な時間が流れる物語中で、主人公がジャガイモを貰うのは二回だけである。そこからして、書こうとしていることと設定に乖離があるし、ストーリーも未熟なのだが、作者がやろうとしていることは伝わってくる。
帰省したら実家の愛犬が死んでいた。ところが家には、犬を思わせる生き物が蠢く気配がある。背後には、認知症が進み寝たきりになった祖母と、それを甲斐甲斐しく介護してきた母との間の、思わぬ確執があった。犬を使った呪術と、家族間の憎悪を描くホラー的作品。すらすら読めるし、ホラーならではの怖さもある。が、アイディア止まりで全体的に安易、という印象も否めない。人物は類型的だし、驚きも無い。そもそもなぜ母は、文句ひとつ言わず祖母の横暴に耐えねばならなかったのか? ストーリーのために作った設定と見破られるようではいけない。
高校二年生の美術部員・次郎は、一見平凡そうで実は天才的な絵の才能に恵まれている。展覧会を控え、コンビニで見かけた大型犬が放つ異様な雰囲気に魅せられ、興味を抱く。描きたいと欲するあまり、飼い主である老人の小屋に侵入するが、その犬は実は、飼い主を奴隷のように従え、子供の肉を食らう、もう何年生きたかわからない悪魔的な生き物だった。後半、小屋でのシーン以降の筆力と、漲る緊張感がいい。が、美術教師・荒川と美術部長・有子の動かし方に工夫が欲しいし、犬も、「ときどき人間の肉を欲する」というのが何とも中途半端。冒頭の、教師と主人公の掛け合いから窺える主人公の性格が、その後の展開にそぐわず違和感を覚えた。
不思議な小説である。本来なら小説と言えないかもしれない。ある日、「世界から隠れてこっそり暮らす者たち」を名乗る人物から突然声をかけられた主人公らのやり取りと、それを受けての思索だけが内容である。何が起こる訳でもない。隠れ住む、とは、文字通り他者との関わりを絶って自分の世界に籠もることなのか、それとも、揺るぎない自己を確立することによってこの世界に新たな自分の居場所を打ち立てることなのか。後者と解釈したが、それも深読みにすぎないのかもしれない。それでも、小説が本来持つべき役割を、この作品は訴えていると思えた。
スケジュール
募集期間:2018年3月12日(月) 17:00:00~ 2018年5月12日(土) 23:59:59 結果発表:2018年10月12日(金)
大賞(1作品) ・編集長講評 ・小説 野性時代本誌全文掲載 ・賞金3万円 準大賞(数作品) ・編集長講評 ・小説 野性時代本誌あらすじ掲載 ・賞金2万円 入賞(数作品) ・編集長講評 ・小説 野性時代本誌あらすじ掲載 ・賞金1万円
募集内容
「小説 野性時代短編コンテスト」は、KADOKAWAの文芸誌「小説 野性時代」に作品が掲載され、編集長から作品講評がもらえるコンテストです。  入賞作品(大賞〜入選)は講評と共に、2018年11月号(10月12日発売予定)の野性時代本誌で紹介されます。応募作品は5000字以上20000字以内の短編であれば、ジャンルを問いません。 【「小説 野性時代」山根 隆徳 編集長からひとこと】 神話の太古より、物語は人に勇気と感動を与え、智恵と癒しを施す、想像力と創造力の源でした。その顕著な形態である小説は、デジタル技術の発達したこれからも、人の営みが続く限り無くてはならないものであり続けるでしょう。テクスト論を俟たずとも、作品は他人に読まれることを必要としています。エブリスタとのコラボレーション企画である本コンテストをきっかけに、次のステップへと進む、新たな物語の創造者と出会えることを楽しみにしています。 「小説 野性時代」編集長・山根隆徳
応募要項
1)5,000字以上20,000字以内の短編小説作品 2)完結必須 3)ジャンルは自由です ※お一人様、何作品でも応募頂くことが可能です。 ※新作推奨ですが、過去作・他の賞で落選した作品を上記の形に再構成して応募戴くのも歓迎です。 ※エブリスタ内の他公式イベント(重複応募を許容しているイベント)との重複応募も可能です。 ※エブリスタ上での有料作品・無料作品のどちらでも応募可能です。 ※非公開作品は審査対象外となります。 ※エブリスタ内の公式イベントや、他サイト等の文学賞で過去に受賞した作品は選考対象外とします。ただし、エブリスタ内の公式イベントで「佳作」「優秀作品」「ピックアップルーキー」に選ばれた作品は除く。 ※応募締切り後の作品編集可。ただし、審査は、締め切り時点5月12日(土) 23:59:59のデータで行います。

コンテストの注意事項(必読)