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新星ファンタジーコンテスト「旅は道づれ」
 ファンタジーの醍醐味のひとつは異境への旅だ。小さな世界しか知らなかった主人公が、使命を帯びたり、自由を求めたり、何かに追われたり、様々な理由から広い世界へと歩をすすめる。そんな旅には、孤独を埋め、未熟な主人公をサポートし、時には厄介事を持ち込んでくる道連れが欠かせない。  今回、大賞と入賞の二作が文章も世界観もずば抜けていたがテーマの咀嚼という意味から、しらぬいさんの『天星石(アスタリウム)の響(うたごえ)』を未完だが大賞に選ばせていただいた。 (三村美衣)

大賞

文明が崩壊し衰退の一途をたどる世界。遊牧民の村に優れた歌い手がいると聞いたジウとニューランは、野宿をしながら草原を渡り、ようやく村にたどりついた。ところが歌い手は到着前に死んでおり、その弟も楽器が弾けなくなっていた。気の良い村人たちに歓待された2人は、この村に唄を復活させるために手を尽くすのだが……。技師のジウと〈伝承収集家〉のニューランの旅を描いたロードノベル。ファンタジーの肌触りとSFの論理性が絶妙な塩梅で、後退したノスタルジックな世界の人間味溢れる生活描写も魅力的だし、そんな時代に、唄の中に刻まれた古の記憶を再構築しようとするニューランの文化人類学的アプローチにもゾクゾクさせられる。早く続きを読ませてほしい!!

準大賞

ナルセル王の治世。王の乱心によって皇太子は廃嫡され、他の王子たちも城を追われ、当然ながら国は乱れた。争いの種になることを恐れた第四王子は、身分を偽って放浪の旅に出るが、隊商の護衛としてたどり着いた街で男爵令嬢と恋に落ちる。争いを嫌って逃げ道を探していた末の王子が、やがて統治者としての責任に向き合い、王となる決意を固める過程が描かれる。淡々とした筆致ながら非常に達者で、ページを繰る手を止めさせない。物語は王道ながら、キャラクターには個性があり、友情や忠誠心、そしてロマンスが心地よく響く。

入賞

地霊が衰えたために故郷を捨て、新天地へと移住した〈龍〉の一族。しかし〈龍〉は人から離れ、彼ら自身の呪力も弱まる一方だった。より呪力の強い者同士の婚姻によって、かつての栄華を取り戻そうとする長老に反発する白久の前に、ある日、見知らぬ男が現れ……。導入が素晴らしくて、作品に引き込まれた。駒鳥が遠くへと旅立つのをためらう描写からはじめ、視点が鳥に移り林に横たわる少女を発見する、そしてその少女が瞬きをした瞬間に視点が少女へと切り替わる。少女の境遇と能力、どこか遠くに行きたいという気持ちが短い文章に凝縮されている。

佳作

天都国に滅びが訪れる時、神宝の天に抗う者達が目覚める――。伝説の勇者を探す旅に始まり、神に選ばれた7人が滅びの神に戦いを挑む物語は、『南総里見八犬伝』+『ファイナルファンタジー』、王道中の王道。人にこの世を託したのが天照と月読なので、破壊神が須佐之男であることも含め、物語の展開は既に読者の血肉となっているものだが、しかしみんなが大好きな英雄物語のエッセンスをここまできれいに再現した文章力にも感嘆した。
昔話の「浦島太郎」を下敷きに、生贄という悪しき因習と戦う少年少女の成長を描いた和風ファンタジー。それぞれが背負う運命とそれぞれの縁が明らかになる展開が巧みで、物語に引き込まれる。最後に明かされる浦島伝説の真実が、素敵なラブストーリーとして胸にすとんと落ちる。
作者以外の者から悪質な加筆や修正を受けたり、経年劣化によって、絵に宿った記憶や想いが黒く塗り潰されてしまう「黒霧」現象。絵の中に入りこみ、絵の世界を旅することで、その絵の本来の由来や記憶を解き明かし、黒霧を除去する絵画潜入修復師という設定が面白い。修復師と見習いコンビを主人公に連作にすれば面白いシリーズになるのではないだろうか。
街を巡って吟遊詩人のように噂話を売り歩く男という設定が魅力で、想像力が刺激される。当事者が噂を耳にすることで、抱えていた問題が表層に浮かび、動き始める。ファンタジー版『笑ゥせぇるすまん』といった趣だが、ちょっとぼんやりさんな青年としっかり者の兎耳少女というコンビがほのぼのと愛らしく、もっと彼らの物語を読みたいという気になる。
濡れ衣を着せられて左遷され、辺境の赴任地へと旅する近衛隊の元隊長。背嚢をあけてみたらそこにはボロ雑巾のような汚れた猫が一匹。城には十二匹の猫が飼われていたが、王宮のおネコ様の誘拐犯になってしまったのかと怯えつつも、猫をもふる喜びに目覚め……。ネタバレを避けては褒めにくいのが困りものだが、猫が抜群に可愛くて、それを思わずもふっちゃう騎士の心情に思わず笑ってしまう、とにかく楽しいツンデレ道中記もの。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2021年7月5日(月) 12:00:00 ~ 2021年9月5日(日) 27: 59: 59 ・最終結果発表:2021年11月中旬頃予定
募集テーマ
第2回目のテーマは「旅は道づれ」です。
・滅びを待つ世界を転々とする男。ほぼ廃墟の町で、放棄された赤ん坊を見つけて……。 ・一人旅で地元人と意気投合。いい所に案内すると言われ着いて行った先は、あやかし用の観光地だった! ・冒険者に住処を追われた魔物は、同じ境遇の仲間と共に、魔王城の城下町を目指すことにするが?
旅は道づれの要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他サービス等に応募中の作品は判明した時点で応募が無効となります。
注意事項
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コンテストの注意事項(必読)