南海電鉄小説コンテスト

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【講評】有栖川有栖
個性的な声にコンプレックスを抱いた少女が、ある人との出会いをきっかけに自分の道を見つける物語。すべてがスムーズには行かず、つっかえながら前に進む点にリアリティを感じます。〈52ヘルツのクジラ〉というキーワードがとても効いていて、はるか昔に思春期を過ぎた私も心に刻みました。南海電車で海辺に向かうくだり(しかも、主人公が成長する前と後との二回描かれる)も印象的で、それもこのコンテストが求めるものにぴったりです。いい小説を読ませていただきました。

【講評】今井雅子
声を発することに臆病な主人公と仲間に届かない52ヘルツで鳴くクジラというモチーフの組み合わせと、言葉のひとつひとつを丁寧に選んだ品のある文体があいまって、孤独な魂が静かに響き合うような独特の世界観を作り上げています。「南海」電鉄小説らしく、海を印象的に登場させ、クジラのイメージと結びつけたところにも、作者のセンスを感じます。映像化するならモノトーンも似合いそうだと想像しました。


【講評】有栖川有栖
ふらふらどこかへ行ってしまった老母を捜し回るので「たずね人」と題されているだけではなく、主人公が忘れていた自分と母を見つけ出すという意味も含まれている、と受け取りました。それに気づく過程にミステリーの手法が少しだけ、さりげなく使われています。ラストは読者の胸を打つでしょう。 ここまで書けるのなら、と惜しまれるのは、同じ言葉が繰り返し出てくることでわかる推敲不足。また、浜寺公園で会う女性たちの描き方は、「ちょっと違うんやない?」と思いました。

【講評】今井雅子
大和川を南へ渡ると昔の自分に帰るという主人公の感覚に、大和川の南側出身者としては大いに共感しました。誰にでも、あちら側とこちら側を隔てる境界があるのでしょう。あの頃の自分と今の自分は地続きだけれど、そこへは二度と戻れないと思い出させる存在として。言葉にするのが難しい感情に名前をつけるような繊細な描写に揺さぶられ、読み手の心も現在と過去を行ったり来たり。かつて母に背負われた主人公が小さくなった母を背負うラストの温もりも好きです。


【講評】有栖川有栖
粉浜駅近くにある万葉集の歌碑からこんな小説が生まれましたか。うまく物語を引き出してくれたな、と思います。万葉集の歌をきっかけにしたボーイ・ミーツ・ガール。和歌を相聞歌、さらにスマホに結びつけ、発想を展開したわけですね。アンハッピー・エンドはないだろう、と思いながら読んだら、早くに結末が予想できるのが弱点ではありますが、「自分の身にこんなロマンティックなことが起きたらいいな」と誰しもがつい夢想することを素直に書いてくれました。こんなこと、青春時代に起きたらいいですよねえ。

【講評】今井雅子
南海線沿線にある歌碑から10代男女の恋物語を膨らませたのは、このコンテストならでは。隣の吊り革の女の子がつぶやいた和歌を男の子がすかさず検索して「キモい」と言われる「第一印象最悪」な出会い。片想いの相手への告白の練習にスマホで相聞歌を交わすという「恋愛対象外」設定。だけど実は女の子は最初から男の子が好きだった…。王道のラブコメ展開ゆえ、先が読めてしまうのがもったいない。登場人物の気持ちの揺れを丁寧に書き込んで起伏をつけると、ラストまで恋の行方をスリリングに楽しめると思います。


【講評】有栖川有栖
こちらは百人一首がモチーフ。優等生の女の子とたった10分間だけ電車で一緒になるのも気が重い……というところから始まって、物語は思いがけない方向に転がっていき、「俺」と「彼女」の心が通い合うようになる。起承転結がきれいに整っていて、流れがいい。 ただ、この語り口は小学5年生のものではありませんね。これなら「俺」は高校2年生でも務まります。わざと幼い文体にするのが嫌ならば、三人称で書けばよかったのでは。そこだけ引っ掛かりました。

【講評】今井雅子
成績の良さも存在も浮いている彼女と主人公の俺。会話の続かない10分間の長さ。通塾の小学生ならではの距離感が、電車での短い移動に緊張感をもたらして効果的。二人を近づけたのは百人一首。しかし、かるた部のある名門中学を目指す彼女に失聴の危機が…。自分のことのように人生最大級の理不尽にあがき怒る主人公がいじらしく、がんばれという気持ちになりました。口調が大人びているので、「中学受験の小学生」であることが早めに伝わると、より世界に入っていきやすいと思います。


【講評】有栖川有栖
題名からしてアクティヴ。ストーリーにも動きがあって、長い時間を主人公の幸太とともに過ごしたような気持ちになりました。家出はよくないことですが、こういうことだってある。大人は経験できなくなってしまうこと――「自分はもう昨日までの自分とは違う」とはっきり自覚する瞬間がうまく表現されています。 冒険の最中に出会う人たちをもっと多彩なキャラクターにすればおもしろさがより増したかな、とも思いますが、それはさておき幸太たち、ラピートに乗れてよかったね。

【講評】今井雅子
大人の都合に振り回されて転校を繰り返す小学生が、家出して南海線に乗るものの、妹がついて来てしまい計画変更……。既視感のある展開ながら、主人公の心情が実感をもって描かれていて、電車に運ばれるように心地よく「小さな大冒険」に乗れました。お節介なお姉さんのキャラもいいし、登場人物は生き生きと物語の中で生きていますが、作者の都合で動かしているところも。より面白いパターンを探って、もうひと磨きできそうです。

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スケジュール&賞典

募集期間:2017年9月15日(金)~ 2017年11月13日(月)
最終結果発表:2018年3月予定

大賞(賞金10万円+選評+ホテル「中の島」潮聞亭ペア宿泊券+マイナビニュースにて掲載。及び、南海電鉄「愛が、多すぎる。」WEBサイトに掲載)1作品
準大賞(賞金5万円+選評+スイスホテル南海大阪「タボラ36」ランチバイキング「ランチ!ブランチ!ランチ!“スパークルズ!」ペア券+マイナビニュースにて掲載。及び、南海電鉄「愛が、多すぎる。」WEBサイトに掲載)1作品
入賞(賞金1万円+選評+記念品+マイナビニュースにて掲載。及び、南海電鉄「愛が、多すぎる。」WEBサイトに掲載)3作品
佳作 数作品(記念品)

審査員紹介

【特別ゲスト】有栖川有栖様/今井雅子様

募集内容

南海電鉄沿線を舞台に「愛」をテーマにした小説を募集します。
・毎年秋のだんじりが終わると、なんだかいつもの岸和田駅が違って見えた。
・御幸辻駅に降り立った私は息子の手を引いて、あの日お祈りをした藤の寺へ・・・
・この自然を守りたい、そう強く想ったのは金剛山に登ったあの日からだろうか。
・あの日、僕は関西空港駅で決めたはずだったんだ。彼女と会うまでは・・・
・「ワシ、征夷大将軍」湊駅の東、南宗寺で会った人は・・・ えっ、江戸時代から来た将軍だって!??
愛情、恋愛、家族愛などの誰かを愛しむ「愛」。
愛好、愛玩などの何かを好む「愛」。
愛護、友愛など、誰かや何かを親しむ「愛」。
郷土愛、地元愛など、自分の育った地域を大切にする「愛」
どれも全て溢れ出てくる「想い」です。
そんな愛溢れる想いに満ちた、心あたたまる、
南海沿線を舞台にした物語を募集します。

※南海沿線の実際にある施設を正確に反映しているかどうかは、選考と関係ありません。

※駅名は実在する駅名をご使用ください。

南海電鉄の路線名

「愛が、多すぎる。」南海電鉄

応募要項

1)南海沿線を舞台にした物語であること 2)南海沿線の駅か列車が物語に登場すること 3)公開状態の作品 4)原稿の分量は1000文字~1万文字程度

※上記4項目に沿っていない作品は選考外となります

※殺人、自殺などの事件性のあるもの及びホラーは選考外となります

※過激な性表現もNGです

※新作推奨ですが、過去作・他の賞で落選した作品を上記の形に再構成して応募戴くのも歓迎です

※完結している必要はありませんが、〆切時点での完成度も選考の対象となります

※文字数カウント(空白・改行を除く)/旧文字数カウント(空白・改行を含む)どちらかで文字数を満たしていれば応募可能です。

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