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次に読みたいファンタジーコンテスト 「ゲーム/遊戯」
講評者の三村美衣氏からのコメント =====  今回、ゲーム小説としては面白い作品が揃っていたのだが、じゃあファンタジーとしてはどうかというとこれがなかなか難しい。ゲーム設定がファンタジーであっても、それがゲームであることを認識してしまうと、ファンタジー的思考とは同居し難いということだろうか。ゲーム世界の神とクリエイターの関係を突き詰めていくとメタフィクション的な泥沼に嵌ることを、みんなどこかで感じているからなのかもしれない。  ゲームにはルールがある。独自のゲームはもちろんだが、既存のゲームであっても読者とルールの共有が必要となる。特にゲーム上での駆け引きが物語の中心命題となる場合には、後出しにならないように、あらかじめ読者にそこを伝える必要がある。準大賞にあげた『山茶花と狼』の葛藤はそこにある。登場する「数国」がオリジナルのゲームだけに、手順を図解つきで丁寧に紹介するという手法を選んでいるが、しかし図も付した解説はカードゲームに慣れていない人には逆に煩雑に見えるのではないだろうか。読者に全てを理解させるのは不可能だし、その必要もない。次の一手が予想できるような気にさせる、なるほどそう来たかと感心させる、文章での誘導が重要なのだ。『山茶花と狼』には、文章だけでゲームの進行を読者に納得させる筆力も備わっている。対戦を中心に据えたゲーム小説を書きたい方は、ぜひとも読んで、自分ならどう説明するかを考えてみて欲しい。 ===== 受賞作品への選評や見どころを一部掲載! また、エブリスタのメディアmonokakiにて、講評者の三村美衣氏よる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中です! 第12回「動きと勢いを物語に折り込む ゲームファンタジーのルール」も、ぜひ読んでみてください。 ※選評は登録されたメールアドレスへ近日中にお送りします。 ※SNSアカウントで会員登録されている場合、エブリスタトップページ上部「現在、このアカウントは仮登録の状態です。本登録はこちら」より、メールアドレスの設定をお願い致します。

大賞

「廃墟になったわけではない、暮らしの温度はまだ残っている」。読者に違和感を抱かせるこの書き出しが上手い。舞台は宇宙人によって侵略された地球だ。侵略といっても、破壊されたりしたわけではない。避難勧告が出され、一時的に人気の絶えた町を、現金2億円が詰まったスーツケースを引きずりながらひとりの男が逃げ、それを2種族合計10人の宇宙人が追う。彼らは「人間狩り」というゲームのプレイヤーであり、追跡をかわしながら5日以内に「自宅」にたどりつけば男の勝ち、敢え無く殺された場合、2億円は仕留めた刺客のものとなる。なぜ男はこのゲームに志願したのか、そして地球では何が起きているのか。緊張感溢れる逃亡劇に、謎解き要素、別れの切なさを盛り込んこんだロードノベル。

準大賞

返せない借金があったとき、どうしても通したい意思があるとき、人々はあらゆるものを賭けて「数国」というゲームで勝負をする。この国では、数国は公正に行われ、そしてその結果は絶対だった。オリジナルなゲームを創作し、勝負の駆け引きを緊張感ある筆致で描いた意欲作。ゲームはいたってシンプル、かつルール説明が丁寧で、この作品を読めば、数国というゲームをプレイできそうだが、図解をつけてのルール説明は、物語の流れを阻害するので評価が分かれるところだろう。この煩雑さをどう回避するかは、ゲーム小説としては避けて通れない問題なので、それをいかにして読者に伝えるのか、どこまで伝えるのか、という問題を考えさせられた。

入賞

主人公はちょっと理屈っぽくて、根暗な男子高校生。そんな彼がひょんなことからゲーム世界に迷い込み、ゲームの中に囚われている少女・白河由紀を開放するために、自動生成系のローグライクなダンジョンに挑み続ける。ゲーム世界でのエピソードと、現実世界での彼の自己回復が並行して描かれる。現実世界の白河由紀は、彼の唯一の友達で将来を嘱望されたサッカー選手の彼女であるというところが、なんとも切ない。

佳作

ゲームオタクで劣等生の拓也に、学年一の秀才で美人の遙が告白した。学校中を騒がせた珍事の背景には、国家規模の秘密が隠されていた! 他国の工作員に命を狙われる2人は、自分たちの脳に隠されている謎を解くために、ゲーム「ディスラプターワールド」に入り、ミッションをクリアしていくのだが……。劣等生にお嬢様が告白するというありがちな展開から、謎の集団に狙われ、オスプレイに拉致され、米軍基地に向かいと、インフレを加速させ、ついには宇宙規模の終焉へと向かう。スケールの大きなアクションSF。
大好きなゲーム世界に転生するのはゲーマーの夢だが、もしそれが、どうしようもないバグだらけのクソゲーだったら。ポリゴンはカタカタ、背景は適当、ゲームバランスも悪ければ、モンスターが壁をすり抜けるのも日常茶飯事。マニアックなネタで笑わせ、さらに愛があるところで自虐的笑いにもつながる。語り口も達者で読ませるが、ギャグだけでは長くはもたないので、この先、どう展開するのかにも注目したい。
募集概要
ファンタジー書評家「三村美衣氏」&物書きのためのメディア「monokaki」とコラボしてお送りする 「次に読みたいファンタジーコンテスト」 面白いファンタジーとは何かを探求しつつ、新しいファンタジー作品をどんどん発掘していきます!
募集テーマ
第13回目のテーマは「ゲーム/遊戯」です。
・遊ばれなくなったボードゲーム。そこではゲームの住人が、それぞれの人生を送っていた。 ・あらゆる揉め事をじゃんけんで治める国。ついには王様までじゃんけんで決めることに! ・ネットゲームで遊んでいたら、自キャラが突然、チャットで文句を言ってきて……!?
ゲーム/遊戯の要素が入っていれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 ページをめくる手が止まらなくなるような、ワクワクするファンタジー小説をお待ちしています。 また、あわせてエブリスタのメディアmonokakiにて、三村さんによる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中! 第12回は「動きと勢いを物語に折り込む ゲームファンタジーのルール」です。 「RPG世界の利点と問題点」「ゲームをどう使うか」といった、具体的なお悩みに答えます。 めざせ、テンプレ脱出!ぜひこちらも参考にしてください。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SFの小説賞の審査員を歴任。 現在も、創元ファンタジイ新人賞の最終選考を務める。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)など。 2018年10月より、monokakiにて、ファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。
スケジュール
・募集期間: 2019年9月2日(月)12:00:00 ~ 2019年11月3日(日)27: 59: 59 ・最終結果発表: 2020年1月上旬予定
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
応募要項
・文字数は5,000文字以上 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品 並びに エブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。

コンテストの注意事項(必読)