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新星ファンタジーコンテスト「追放/下剋上」
 追放/下剋上テーマは冒頭に見せ場を持ってこれるので、読者を物語の世界にストンと引き込むことができるが、その反面、強烈なだけに既視感を伴うという難しさがある。と思いながら読み始めたのだがレベルが高く、たいへん面白かった。  大賞「最強パーティを追放されたのでソロで魔王を倒してきます」はその既視感を逆手にとった意表をつく展開。人間の敵は魔王じゃないでしょと言わんばかりの冷徹な発想が物語をエスカレートしていく。その真逆を行くような内容が女子力全開の準大賞「悪の恋路は深淵に咲く」。上位二作品が邪悪系嫌展開作品になってしまったので、しっとりと心に訴える「追放サレ妃は後宮に戻りたい」でほっこりしてください。 (三村美衣)

大賞

天才揃いの仲間の中で、いい人だけどいまひとつ実力不足な主人公が、魔王退治を前にパーティから追放されて……というありきたりな追放ものかと思いきや、その後、その前提が次々に覆されていく。主人公は一国の王子で、いい人なのはうわべだけで、実は使えるものは仲間でも他国の軍でも使いたおし、自分の目的を達成する悪辣な策謀家なのだ。あれよあれよという間に、魔王退治まで進む展開には唖然とさせられるが、その魔王退治も序の口。「じゃ、戦争を続けるか。」というフレーズと共に、物語はさらに二度、三度と転がり、思いがけないところに連れて行ってくれる。

準大賞

差別意識剥き出しで自由民の冒険者の一人をパーティから追放する冒頭から、嫌な緊張感が溢れ、最後までまったく気が抜けない。この追放劇を仕組んだのは視点人物である女性ヒーラーで、彼女がこのパーティに参加した動機が、優秀だが平民の生まれである彼女が玉の輿にのるためだというのもエグい。打算的な視点からのキャラ描写が上手く、パーティ内のどうでもいいキャラまで、影の方の輪郭がくっきりと見える。どんでん返しも凄みがあり面白い。

入賞

結婚なんて煩わしいだけだと思っていた宮城の衛士・銘軒に突然降って湧いた婚姻話は、なんと皇帝の妃の下賜だった。しかも、その元妃・雹華には侍女毒殺の嫌疑がかかっていた。どんな悪女がやってくるのか戦々恐々たる銘軒の元にやってきたのは、匂い立つような美女だった……。得体がしれない嫁なので遠ざけたいという本心と、主上からもらった家宝だから大切にしなければならないという気持ちがせめぎ合う銘軒と、あくまでも自然体な雹華の対比が面白く、ちぐはぐな2人の婚姻の行方を見届けたくなる。ファンタジー的要素はほとんどないが、宮城や後宮の描写は短いながら切り取り方が上手く、この架空の王朝の雰囲気が伝わる。

佳作

"魔王の面前でパーティの仲間に裏切られ、奈落の底に落とされた勇者を救ったのは、かつて魔王に使われていた剣。その剣の魔法で奈落を抜け出して見たら、そこはなんと80年後の世界だった――という掴みをはじめ、王道の展開ながら随所で工夫が効いており、どんどんページをめくらせる。魔王への復讐のために集まった仲間たちも、性格・能力共に個性豊かだし、なによりもストイックな主人公のモフモフ変身がかわいい驚き。
前王の時代から魔王の側近として努めてきた竜人のラドバウトがある日、老いを理由にお払い箱。処刑じゃないだけでも感謝しろと言われ、身一つで放逐された。魔王軍の全てを知る自分を生きたまま放り出すとは、なんと舐められたものか、と怒り心頭の彼は、人間の国へと向かい勇者を育成する学校を開校する。具体的に描かれる授業風景に説得力があるが、ラドバウトが魔族のくせにやたらと人格者で、ぱっとしなかったパーティを、礼儀作法や所作も美しい高潔な勇者一行へと育てる様子はまさに教育者の鑑。彼の教え子たちは果たして魔王とその側近たちを斃すところまで到達できるのか。先が楽しみ!
やり尽くされた感のある特殊職務の従事者による異世界転生もの。落語家転生ものはいくつか読んでいるが、同じ話芸にしても講談師というのは新しい(と思う)。軍記や歴史を題材とする講談師が異世界で講談をやると、一種の召喚魔法のように作用するところが特徴。ユーモラスな物語運びから一転、宮本武蔵伝が朗々と流れる中で、武蔵と魔物が対峙する戦闘シーンのビジュアル的かっこよさが格別。
魔王を斃した勇者は、褒め称えられ報奨金を授与されたにも関わらず、その後、5年間の投獄と国外追放を言い渡された! 出所した勇者は、看守であり、国外へ退去するまでの保護観察官でもある男と共に、かつての仲間を訪ねながら国境へと向かうのだが……。単純で直情的な勇者と、感情を内に秘めるタイプの保護観察官。性格も立場も間逆なバディの設定が光るロードノベル。いったいなぜ勇者は投獄されていたのか、なぜ5年後に国外追放されるのか、次第に明らかにされる真実がスリリングだ。
魔族の領域に近い辺境の山間で孤児院を経営するミハは、山奥で奇妙な老女に出会った。いかにも高貴な口ぶりながら、貴族とも思えない進歩的な発想を持つ不思議な女性は、しかし数瞬前のことを忘れてしまう「黄昏の病」を患っていた。姥捨てだと直感したミハは、彼女を連れ帰り孤児院で世話をするのだが……。人は誰しも年老いるし、呆けることもある。もし、人間兵器とも言うべき魔道士が痴呆となったら――。「追放」をテーマに、生々しい問題に挑んだ意欲作。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2021年11月2日(火) 12:00:00 ~ 2022年1月9日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2022年3月下旬頃予定
募集テーマ
第4回目のテーマは「追放/下剋上」です。
・謀略で騎士団長の座を追われ、家業の酪農を継いだ。大変だけど動物は癒されるなぁ。 ・いじめられっ子の少年は悪魔と契約し、学校中の人間を下僕にする計画を立てる……。 ・魔王交代の決闘で負けた挙句、呪いで弱体化!こうなったら鍛え直して、また魔王を目指すぞ!
追放/下剋上の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他サービス等に応募中の作品は判明した時点で応募が無効となります。
注意事項
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コンテストの注意事項(必読)