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新星ファンタジーコンテスト「やり直し」
 予想はしていたが、転生やリプレイものが山積みとなった今回のテーマ。充分揉まれ、こなれた人気のテーマだけに、全体的にレベルが高く、読み応えのある作品が集まりました。  転生やリプレイは、物語をどう締めくくるか、という部分がとても難しいのだと改めて感じました。繰り返しの中でのこの1回の人生をどう際立たせるのか。繰り返しにどう区切りをつけ、登場人物と、そして読者をどう満足させるのか。入選に選んだ三作は、お話としての展開の面白さもさることながら、読後感のしっかりした作品で、甲乙つけ難い傑作揃いです。ぜひお読みください。 (三村美衣)

大賞

無実の罪で処刑されること8回。殺されるたびにリセットを繰り返している后妃が、9回目の人生で目指したのは、もはやハッピーエンドではなく、お気楽な人生と苦しまない死だった! 王道のリプレイものだが、陥れた妹のことも恨まず、楽をするためにだけ努力する、主人公の行動原理がユニーク。悪役の妹も含め、女性陣のキャラがかわいらしい。対決シーンは「書」の書き比べや筆跡判定と、動きとしては地味なのに、これが蘊蓄も含めてとても面白い。後宮での知恵比べで、最後まで読者を楽しませようというサービス精神あふれるエンターテインメント。

準大賞

時を巻き戻す特殊能力を駆使し、25歳の若さで裁判長の地位を手にした紅。しかし初出廷の日に、彼女が立ったのは、異界の法廷の被告人席だった! 能力の不正使用の罪に問われた彼女は、能力を封印され、人生をリセットされてしまう。リベンジに燃える紅だが、社会人としての苦労も知った紅は、高慢だったかつての自分とは異なる道を歩きはじめる。意表をつく冒頭から、次々に繰り出される意外な設定がスリリング。意地っ張りなヒロイン、ツンデレな幼馴染、イケメンなライバル。敵同士だった特殊能力持ちの3人の間に、友情が芽生える青春小説っぽい展開も心地よい。

入賞

同乗していたタクシーが事故に巻き込まれ、姉は死亡し、妹だけが命をとりとめた。ところが、目覚めた妹の身体に入っていたのは、姉の魂だったという冒頭から、引き込まれます。優等生の妹が、何者かから脅迫を受けていたことに気がついた姉は、深くに潜りこんでしまった妹の魂を呼び戻すため、事件を解決しようと奔走。25歳のOLが女子高生に戻る戸惑いや、姉妹の性格のギャップがユーモラスで、だからこそ結末が心に響きます。

佳作

愛する夫に裏切られ、生贄となった19歳の皇妃ユリア。炎に身を投じた彼女の耳に母の嘆願が響き、目覚めると彼女は9歳に戻っていた……。もうひとつのローマ帝国を舞台に、リセット、転生、陰謀、戦争、神様、血筋、誕生の秘密、世襲、奴隷問題、などなど。王道展開の上に、さらにファンタジーと歴史小説の要素をてんこ盛りにした、スケールの大きさが魅力。二度目の人生を歩むユリアの強さと凛とした美しさが素敵すぎて、プロローグに至る道筋がまだ見えない。これからの展開が楽しみな作品だ。
乙女ゲーの世界に転生するパターンは珍しくないが、ヤンデレ鬼畜系(ただしコンシューマーゲーム)のバッドエンド後というところが本作のミソ。吉原に売られたヒロインに転生した主人公が、ヤンデレ落ちを避けながら、ゲームには描かれていない結末を模索する。プレイ中はお人形のようにしか見えなかったヒロインが、吉原の芸妓として身を立てようと努力する。芯の強さと、成長が気持ちの良い作品。ヤンデレ系の乙女ゲーに手を出したくなるので要注意です。
広大な砂漠が広がる異世界を舞台に、地図を作製販売する「世界製図協会スタジア本部」のスタッフが、隊商からのクレームを受け、地図の誤りを調査する。異界の情景の面白さで読ませる冒険ファンタジーだ。巨大なロック鳥にまたがり、空から地面を見るというファンタジーならではの測量方法と、地図が狂った理由の謎ときの面白さ、「やり直し」というテーマ解釈の独自性にわくわくさせられた。連作になるであろう、今後にも期待。
妹の姿をした魔女によって人生を乱され続けた男とその妻の物語。魔女の魔手が妻に及ぶことを恐れ契約結婚を申し出た夫と、愛ゆえに疑心暗鬼となり契約期間の終わりを恐れる妻。ひたむきであるが故に悪夢の「やり直し」に囚われてしまった彼女が今置かれている状況が次第に見えはじめる。薄暗い部屋で人生を語る女性と、その話を聞く老医師。ふたりの会話の中に登場するラクサの木が、結末で大きな意味を持つ展開が見事。短い作品ながら、長く連れ添った夫婦が抱える不安が読者に伝わり、胸が締め付けられるようだ。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞作には三村美衣氏からの選評と、個別にアドバイスをお送りします。 あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2022年7月4日(月) 12:00:00 ~ 2022年9月4日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2022年11月中旬頃予定
募集テーマ
第8回目のテーマは「やり直し」です。
・憧れの異世界転生をし、冒険かスローライフか……と思っていたら、転生前よりハードモードな環境で!? ・とある武将の生まれ変わりが、かつての自分が生きた時代へタイムスリップ。歴史を変えようと目論むが……? ・神の手によって幾度もやり直しをさせられている世界。その事実に気付いた男は、神を殺すことを決意する。
「やり直し」の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5,000文字以上。 ・20,000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等に応募中の作品は判明した時点で応募が無効となります。
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