正徳4年、霊元法皇の後宮・伊勢は法皇の第13皇女・八十宮(やそのみや)を出産する。その翌年、物心もつかない幼子のうちに、八十宮は江戸幕府7代将軍・徳川家継の正室として婚約。しかし家継は8才で早世してしまい、八十宮は数え3才で未亡人となってしまう。八十宮は、一度も顔を見たこともない幼将軍の未亡人として生きることを強いられ……。愛憎渦巻く大奥で生き残ることはできるのか。波乱万丈歴史譚。

明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった。武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、紀州の老剣士・片倉隼人と江戸の下町育ちの青年・草介は、維新の動乱で残された手紙や小包を配達する「御留郵便御用」として明治をひた走る。密書や金品を狙う賊を退け、大切なものを届けに各地へ向かう二人はやがて、さらに大きな動乱に巻き込まれ――。想いを届けに参る、明治初期の戦乱剣客譚。

幕末激動の明治2年、賊軍の地であった出羽国に生を受けた安達峰一郎。時代は明治の御一新を迎え、幽玄に聳え立つ山形城には藩主もいない。彼は教育熱心な家族の愛情に包まれ、世間の風潮とは関係なくのびのびと育つ。彼の郷土が国策事業の一端に組み込まれ、住民運動が巻き起こる中、峰一郎は法律家としての精神を少しづつ培っていく。アジア人として初の国際司法裁判所所長に選出された男の、若く夢に溢れた青春時代を綴った物語。

時は大正、豪商として名が通っている柳原家。その裕福な家で生まれ育った櫻子は、後妻としてやって来た義母・勝代と腹違いの妹・珠子に疎まれていた。本来ならお嬢様であるはずの櫻子は、花嫁修業だと理由付けされ、裏方の女中として質素な暮らしを押し付けられている。さらに贅沢三昧を続けていた家族は、暴利な高利貸しで有名な金原商店から金を借りていた。世間で嫌われている金原商店の主人・金原清に、櫻子は借金の肩代わりとして嫁がされ――。大正シンデレラストーリー。

大正時代の武家家族・辻本家の長女であった辻本百合子が結核によって亡くなった。 その通夜に参列していた庭師の蜂須吾両は、密かに百合子へ淡い片思いを抱いていた。周りから見ても二人は特に仲が良く、百合子の死で吾両が心に深い傷を負ったのは明らかだった。通夜の席を抜け出して百合子の部屋へ一人向かった吾両は、彼女が生前使っていた着物を抱きしめ、涙を流す。 その姿を見ていたのは……。華族の長女の死から生まれた恋物語。

戦国末期に桜の化身の如く舞い降りた美将・織田島宗冬。彼は嫡男でありながら、秘密を抱える忌むべき体により父に疎まれ、他家へと人質に出される幼少期を過ごす。常に命を危険に晒す日々だが、側には女と偽って宗冬を守る美貌の忍・藤森葛が付き従っていた。葛は己の持つ全ての知識や武芸を宗冬に仕込み、13にして宗冬は戦で手柄を立てる。しかし世の趨勢は刻々と推移し、二人は時代の荒波に飲み込まれていく――。BL時代劇。

天文21年3月、療養中だった尾張の巨星・織田信秀が没し、弾正忠家は大黒柱を失った。齢19歳で未だ目立った武功の一つもない信長は、宿老に葬儀の主導権を奪われ、主家が実権奪回に動き出そうとする現実を見据え思い悩んでいた。すると唐突に、庭石に白い女が浮かび上がる。運勢を司る女神を自称する白光の美女・瑞兆は、信長を天下人にと告げる。彼女の存在が信長の命運を大きく変えることに――!?　戦記コメディ。

戦国開闢の英雄・北条早雲が死して2年。東国は再び戦雲に見舞われ、駿河の今川氏親の家臣・福島正成が率いる軍勢が甲斐へ乱入。しかし甲斐国守・武田信虎に撃退され、あわや今川軍壊滅のとき、一人の天才武将・北条長綱が覚醒。見事に全軍をとりまとめ撤退戦に成功させる。一介の神職で世を終えようとした長綱は、自らが望まないのにもかかわらず、この時から北条幻庵への道を歩むことに――。北条四代の興亡を描いた戦国ドラマ。

人見知りで男の人が苦手な女子大生・橋本喬香は、神様の失敗で群男割拠する三国時代に飛ばされてしまう。体力増加と武芸の才能、言霊の力を授けられ、戦乱の世に放り出された喬香は、美周朗と呼ばれた超絶イケメン・公瑾と出会う。むさ苦しい男達の中で我慢の日々を過ごすうち、自分の意志など関係なく結婚させられそうになり戸惑う喬香だが、優しく口説いてくる公瑾に心惹かれはじめ……。三国時代にタイムスリップする切甘ラブコメディ！

時は幕末、江戸の町に一風変わった二人組があった。本所浅草一帯を取り仕切っているやくざ「衣笠組」の親分・太一郎と、貧乏御家人の次男坊・佐々木英次郎は気の置けない仲で、度々面倒事を頼み頼まれる関係だった。ある日、英次郎は太一郎から出島の阿蘭陀人・クルチウス商館長が幕府との密談のため江戸に出てくることを知らされる。御先一刀流の免許皆伝である英次郎は異人警護を頼まれて……。幕末期、様々な事件に挑むバディの連作短編集。

上州の地を治める江戸幕府旗本交代寄合・岩松家の長女・武子。凛とした聡明な彼女は、誰もが認める馬の乗り手に成長し、薙刀や剣もかなりの腕前となっていた。参勤交代で江戸に来た武子は友人と楽しい日常を送っていたが、将軍徳川家茂が逝去し時代の流れが変わり始める。そんな中、岩倉家の使者としてやって来た中井弘に求婚まがいのことをされ二人で暮らし始める。しかし正式の妻になっていないと聞かされた矢先、運命の人が現れて――。幕末志士の恋愛譚。

時は江戸、天下泰平の終焉がちらつく時代。人を疑うことを知らず、馬鹿が着くほど大真面目な新選組局長・近藤勇は、物の怪や幽霊から京を護れと仰せつかる。行きつけの居酒屋で声をかけてきた男・覇王樹に悩みを話すと、彼からとある女を手伝いに紹介される。それは陰陽術を使いこなす不思議な女・鈴音であった。最初は訝しんでいた土方付きの世話役として、近くで彼を見つめるうちに、鈴音の気持ちに変化が生じ……。陰陽師×新選組の切ない純愛譚。

後の新選組の主要人物たちが集まる試衛館道場。お人よしで拾い癖のある近藤勇は、ひどく身なりが汚れた少女を連れ帰って来る。彼女は家族がおらず、「いらない子」と虐げられた処から逃げ出してきたというのだ。全身を磨かれ見違えた少女は土方歳三に蛍と名付けられ、近藤家に身を置くことが決まる。彼らの温かさに触れていくうちに、蛍は表情豊かになり心を開いていくけれど――。幕末新選組ラブストーリー。