十八歳という若さで死んでしまった女子高生の漣葉。死を受けいれて眠るように目を瞑ったが、意識は遠のかずゆっくりと目を開くとそこは一面に広がる向日葵畑だった。死装束姿のままで歩き回っていると妖達に追いかけられる羽目になってしまう。そこで出会ったのは「姚隆郷」と呼ばれる天国でも地獄でもない世界の火行区分の当主長・狐ヶ崎龐だった。漣葉は新たな余生を過ごすことになるのだが――。和風日常ファンタジー。

高住真尋はとある掛け軸が目に留まり、入った骨董屋の壺を不注意で壊してしまう。店の主人である宗像利音からその金額分をバイトで働いて返すこと、さらには大学進学で実家を出て何処かに住もうと思っていた真尋にここに住むことを提案した。その骨董屋は普通とは違う店であり、宗像は妖祓いの天明道の御三家のひとつの家柄の出だった。そして、真尋自身もその出自にある秘密を隠し持っていた。非日常現代ファンタジー。

時は江戸時代中期、江戸と大阪の間に位置する「水上藩」は水資源に恵まれた豊かな藩であった。昨年に藩主が病死し、長子がその跡を継いだばかりだが、新藩主の側室の縁談が破談になり騒ぎとなっていた。新藩主の異母弟である高虎は、三男で継ぐものも無く早々に城を出て暮らす。神楽を見に月見ヶ丘神社を訪れると、神主と巫女の咲乃が現れる。見事な舞を披露した咲乃だったが、侍に強引に養女にされて――。逆転和風シンデレラストーリー。

上品で落ち着いた雰囲気に包まれた喫茶『いさか屋』。二代目店長の三宮浩輔が店を切り盛りする表向きは普通の喫茶店だ。しかしこの店の実態は、浩輔以外の店員は全員妖怪で、看板猫の正体は猫又、客として度々人ならざるモノが集まる「あやかしの憩いの場」であった。小豆洗いの明乃を新しく従業員に迎え、お店は賑わいを増す。あやかしだけが訪れる夜の営業は、百鬼夜行状態で――。人とあやかしの狭間の日常を描いたハートウォーミングノベル。

外界と一線を引く霊力が高い者しか入れない神域に住むワダツミ。退屈で仕方がなく、時たま海に流れ着く漂流物を探して暇つぶしの種にしていた。そんな中、沖から流れてきた小舟に四歳前後の人の子を見つける。三途の川の渡し賃を持ったまま迷い込んだ小童・アキラは神域から出られず、ワダツミと共に暮らしはじめる。化け狐や烏天狗、猫又ら妖に囲まれて賑やかな生活を送るが……。妖と人の出会いと別れを描いた切ない怪奇譚。

遥か昔平安の世、八岐大蛇との闘いに苦戦する陰陽師達の前に雨羽雷郷という絵師が現れる。雷郷は怯むことなく妖の姿を紙に描き、絵の中に封じた。「妖絵師」と呼ばれた彼の存在は気味悪がれ表に出ることなかった――。そして現代、ごく普通の女子高生・神枝依子は、毎晩川辺で泣く女の夢に悩まされていた。ある日、誰もいないはずの美術室で妖怪の水墨画を描く美少年・雨羽ゆうと出会う。彼は「妖絵師」の異名を持っていた……。青春ファンタジー。

かつては価値観の違いで衝突しあっていた元神様や妖怪たち。彼ら魑魅魍魎が和解し、今はのんびりと平和に過ごしている。そんな世界に現る七つの大罪を象徴する者たち。「怠惰」をあらわす彦星様の牛だった天女、「傲慢」をあらわす女子高生姿の風の妖精、「嫉妬」をあらわすかつて都を脅かした祟り神……。個性豊かな彼らは、恐ろしくも人間より人間らしい。そんな魑魅魍魎と天使たちの日常が語られる――。和風オムニバス。

花々が咲き乱れる自然豊かな国・天香国。帝都一番の妓楼「月花楼」の妓女である梅花は、10日に一度の休日で買い物を楽しんでいた。露天商に卑しい身分だと言いがかりを付けられていた所を、お忍びで都を訪れていた王子・白桜に助けられる。梅花との出会いが白桜の心に変化を生み、彼は幼馴染みである白蓮との縁談を白紙にしてしまう。嫉妬心を募らせた白蓮は、梅花を消そうと企てるが……。身分違いの王宮ラブファンタジー。

炎の力を使える青年のリ・リュウキはある山で氷の中で凍り付いている少女を見つける。炎で氷を溶かすとその少女のソン・ヤエは生きていたが、リュウキ同様に名前以外は覚えていなかった。二人は過去を取り戻すために行動を共にすることになるが、ヤエと共生していた白虎のハクが突如消えてしまう。ハクの件は西国の最西端にある「シュキ城」へ赴けと謎の毛皮男から告げられる。乱世の時代を描いた古代中国風ファンタジー。

潜りの法術士シオンは故郷から旅に出て、「獣人の谷」と呼ばれる異国にたどり着いた。そこには獣神を祠る巨大岩窟があり、祠守りの獣人少女コリスに歓待されることになった。獣神の巫女であるコリスと男装がバレてしまうシオンのスローライフ。そんな中、谷の長ザイダルが帰還して魔物ハンターのジェラルドとシオンで魔物退治に向かう。人生流れっぱなしのシオンはどこに向かうのか――。中華風ほのぼのハイファンタジー。

百家最弱と名高い思想家・小説家である李翰は、突然麻袋を被せられてかどわかされる。攫われた先は、王寵を競う女の園・鱗後宮であった。風呂に押し込まれて全身を磨かれると、女官に毒を飲まされ「一歩でも後宮外に出たら、毒が回って死ぬ」と脅される。絢爛大富豪や白馬の武人ら有望で危険な女子が渦巻く蟲毒さながらの後宮で、李翰は生きていけるのか――。古代中華風のシスターフッドストーリー。

人間と獣人、そして有翼人が存在する世界。人の姿でありながら背に羽が生えている有翼人は、両種族に迫害を受けてきた。薄珂の最も大切な弟・立珂は有翼人であり、重い羽に自由と体力を奪われるうえに人間からも獣人からも狙われてきた。命懸けで弟を守ってきた薄珂は、逃げ延びた先で兄弟共々匿われる。兎獣人の商人・天藍と出会ったことで、薄珂の運命は大きく変化する――。三つの種族を巡るファンタジーBL。

国に属する官人陰陽師の嫡流である紫条蓮と、彼に付き従う彩流依は、『依代』の存在を確認するため、神仏混淆の名残がある山に入る。それは蓮の『式神』を手に入れる試練でもあった。険しい山道を進む中、足を滑らせた依に朽ちた木の幹が突き刺さる。一瞬死を覚悟するも、身体を貫いていたのはその地に祀られた『依代』だった。蓮の呪力で彼の式神にされた依だが、紫条家に暗雲が生じて……。ダークBL×歴史ファンタジー。

影なる陰陽師としてかつては多くの妖怪を屠った陰祷師。その存在が歴史上から姿を消して長い年月が流れていた。秋葉るいはその陰祷師の少年であり、剛濫という鬼は彼を宿主としていた。ある日、るいは養父の知り合いである興円寺住職の柳に頼まれてお清めに行くが状況は思ったよりも悪くなっていた。近くの御神体が落雷で焼け落ちたことが関係していると知り――。あらゆるものが流転する世界を描いた現代ファンタジー。

天狐の父と朱咲の血を引く母をもつ半妖の少女・朱咲あかり。彼女には三人の幼馴染たちがいた。青柳の血を引く妖の青年・青柳結月、白古の血を引く妖の青年・白古秋之介、玄舞の血を引くほぼ人間の青年・玄舞昴。彼女たちはそれぞれの家の父母からの教えを胸に、陰の国と式神たちから大切なものを守るために戦うことになる。なぜ陰の国は人と妖が共存する陽の国へ侵攻を始めることになったのか？　和風バトルファンタジー。