月光は胸に沁みいる

この世界は、竹取物語の世界と通じているのでしょうか。 ならば月の人は、そのままの姿で地上に降りることは出来ないはずです。 咎人は夜になると、月光を避け、影をつたい歩いてひっそりと生きてきたのかも知れま
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年ふりて……つもった雪の下から、過ぎし日が顔を覗かせたとしたら

中年の主人公が雪降る夜に体験したファンタスティックな出来事、それは雪に覆われた過去とかつての思いを現出させる。 完成度の高い掌編だ。人生の半ばを過ぎたくらいの読者なら、いろいろと思うところがあるだろう
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ナオは家族とともに(En famille)

貴種流離譚、という物語の類型がある。 「小公子」や「小公女」などがその典型だろう。高貴あるいは富裕な身分の出身ながら、本来の環境から離れて育つ主人公の物語だ。 間違いを恐れずに言うと、ナオは現代の貴
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あまねく人にクリスマスを

アドベントカレンダー2021のラストを飾るに相応しい、心やさしい作品です。 作中の架空の村は、生まれついての貧富の差や職業的階級のある世界。それはコロナ禍や貧困、家庭の問題など様々な理由で子ども同士
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最後に落ち着くところ

内容に関しては、すでにほかの方からレビューが出ているので、そちらをご覧いただきたい。 私は以前から、ファンシー・コウさんがよい作品を書かれているのを知っていた。だが今回、アドベントカレンダー企画で自分
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往きて還りし物語

一読すれば分かるように、冒頭と末尾に同じ楽曲が使われている。 あるアイドルに提供した、主人公の手による曲だ。それが出発点であり、到達点となる。 物語の基本的な形は、「ホビット」や「指輪物語」のような
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空白が幸せを醸す

 冒頭から、詩愛はひとりでいる。  彼女の隣、もしくは向かいに座るはずの浅黄は思い出の中にしかいない。待っている彼女の立場で言えば、そこに誰も立ち入れない大きな空白だけを残して逃走中なのだ。  出会
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韃靼海峡を渡れ

 すごい作品だと思った。読み始めて止まらずに、読み終えて眠れずに、私はベッドの中でスマホをタップしている。  主人公が想いを寄せる遥は美人で頭がよくて、思春期の男の子だったら一度は憧れる幼なじみの美少
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この作品は非公開になりました

年の瀬に、人は時の流れに思いを馳せる

 ヤーヌス(ヤヌス)という神がいる。ローマ神話で「門」を司る神で、前と後ろに顔があるという。一年の終わりと新しい年の始まりを見守るのか、1月を司る神でもあるらしい。英語のJanuaryはヤーヌスが語源
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キラキラ、というよりも、ニヤニヤしちゃう?

 あらかじめ作者から予告があったように、どんでん返しありの、「実は……」の裏話ありの、面白い作品でした。冒頭のミス・リーディング、緻密に貼られた伏線と、小説でなければ味わえない楽しさに満ちた「恋バナ」
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トゥインクル、じゃなくて、スパークル!

 ハイティーン少女の恋バナは苦手です。だってオジサンとなった私から、いちばん遠い世界線だもの。地平線と紫色の月さんの描いた情景は、もう入り口からキラキラしてて、読み進むとキラキラどころかピカピカで、「
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このひとを見よ

心を打つ作品である。 これを書くのは(過去を思い出さねばならぬから)相当につらかったのではないかと、私には想像することしか出来ない。 正直にいえば、読むことがつらい作品である。 だがまずは読んで、登場
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見るは知るなり

 一見、気軽な大人のボーイ・ミーツ・ガールともとれる本作は、死生という重いテーマを扱って、それでいて読みづらさを感じさせない。  主人公は、出産を間近に控えた妻を亡くして、何も出来なくなってしまう。死
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まるでアイディアの玉手箱(ジャックポット)や!!

 ネタバレなしで。  しのきさんのレビューにあるように、豊かな発想とリアリティを持たせるための細部の作り込み、そしてよい子たちのイメージを壊さないための配慮など、書き慣れた作家による熟練の技を堪能でき
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無心であること

 児童養護施設でアートセラピーのボランティアをしている知人に、「障がいのある子たちは、なぜだろう? とても可愛い」と、聞いたことがある。この作品を読んで、そのことを思い出した。  むつかしい話ではない
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瞳そらさないで

 レビュータイトルはDEENのヒット曲である。とくに歌詞が本作と関係があるわけではないことをお断りしておきたい。  Adult Children(AC)を扱った、深く考えさせられるテーマの一作。チャイ
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捨てる強さ、捨てない強さ

 主人公は高校生の時に人生の転機を迎えた。  警察に補導され、運よく釈放されたものの学校には戻れず、無為の日々を過ごしていると、テレビで「髪を売る」少女たちの存在を知ったのだ。画面の向こうで少女は、「
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孤独に耐え、高みを目指し、そして男は職人となった……

 伊筆葉菜さんの作品は初めてで、お名前も見かけたことがある程度だったので作風も知らず、さればこそ期待と一抹の不安を胸に抱きつつページを開いた。  1行目で、笑いそうになった。某局のプロフェッショナルを
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たとえば紅茶に入れるのに、砂糖より甘いものがあるとしたら

 主人公・ミラは星空に憧れていたが、入学した高校に天文部はなかった。教室で駄々をこねる彼女を見かねた清水の提案か、それともミラがどうしてもと主張したのか、ふたりは冬休み直前のある夜、ふたご座流星群を観
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収束点、前夜

 プロフェッショナルの世界は厳しい。求められるものが常に「最高の結果」である以上、それを提供出来ないーー要件を満たさないーー者は使われないし、将来の可能性がないと見なされれば待機要員として残ることさえ
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ケンタウルス、露をふらせ

 夜空、星空といえば、とにかく私は宮沢賢治の作品に描かれるような黒か濃紺のイメージを持っているのだけれど、「星集めの絵」がそういう背景だと描写されていて妙に納得してしまった。  だが同じ心象映像を想起
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A Hint of Fantasy. 〜良質なドラマはファンタジーの香り

 そのお名前はよく目にしていたのだけれど、名波夏美さんの作品は初めてで、期待しつつ読ませていただいた。結果は皆様の感想ぺコメどおり、とても良質であたたかなヒューマンドラマだった。  まだの方は、是非と
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私の場所は遠く、異国にひとり

 作中でも語られるように、グリニッジ標準時と日本の時差は9時間。  ひと昔前と違って、今はSNSでもメールでも一瞬でつながる。けれども、つながった相手は9時間先の未来を生きているようで、人はそこに距離
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歌、歌うように綴る

最終ページのコメントに書きましたが、本庄冬武さんの作品を読むのが初めてで、事前知識のない私は、文章いや文体に驚きました。 「歌っている」と、思ったものですから。 韻を踏んだ言い回しや繰り返し、読点まで
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夢を抱くということ

期待していた愛らしい子犬ではなく、老境に差し掛かった不躾な口をきく犬が主人公の家にやってきた。 しかも両親、とくに母親は息子のためによかれと思って、わざわざその犬を引き取ってきたらしい。 家族の中でた
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はたして彼はホームズか

タイトルを見た時から、「これは読まにゃあかんやつや」と思っていた作品です。だって、クローンだもの(笑) ネタバレありにチェックをつけたので、遠慮なく。 読んで興奮しましたよね、皆さん。最高の出来栄え
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大切なもの

おとぎ話の語り口で始まったこの物語は、中盤では現代の日本が抱える高齢者介護(ヤングケアラー)の問題へとシフトしていっているように、私は読み取りました。(作者の意図は、まったく違うかも知れませんが・笑)
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捻りの後の着地がすごい

何度、捻りが入ったでしょう? G難度の大技ですね。 プロットの見事さと、サービス精神がすごい。 完全に脱帽です。 読後の(ホラーなのに)満足感がハンパないです😊
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タイトルが放つ芳香(フェロモン)に魅き寄せられて

AI、右腕、まあアシスタントが欲しいのか…… と、シンプルだが、みょうに気を惹くタイトルが気になって読みに来た。 冒頭のあっさりとした状況説明から、掌編・短編を書き慣れた作者だろうなあとは思ったもの
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そうくるとは、マジで思わなかった

個人的には好きですが! ユーモアを隠しきらないところが憎らしい。 かえって怖かったですよ、本当に。 真面目な感想としては、冒頭から人間関係第一段階と、女の(失礼、女性の)情念がノミで彫り込むように語
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