繊細な描写が光る心温まるドラマ

とにかく描写が繊細で、作者の脳内にはしっかりとこの廃工場とその周辺の工場群が組み立てられ、そこで登場人物たちを自在に操っている。 例えば「周囲の工場の音で」さらりと書かれているこの一言で、読者はここが
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緊迫した空気感と、与えられない答え

月光のもとで語られる一人芝居。なんだか古代ギリシアの劇場で、上のほうから演者を見下ろしているような気分で拝読いたしました。 さて、日本語には「ん」で始まる言葉はありません。作者さまも知って書いたのでし
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余白がいい

限られたページ数のなかで、4人も人物がでてくるのに読み手が混乱しないのは、作者の筆力によるところでしょう。奈津美、さくら、牡丹、そして彰。おそらく一時間ほどの間に起きた不思議な出来事に彰が混乱するよう
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求めあう魂

メビウスの輪。ひとつのねじれをもつ輪。紙の表を進んでいくと裏がわにいる、という不思議な輪。 人間には魂が結ばれている相手がいる、らしい。わたしは未だ出会ったことがないと思っているのだが、幸か不幸か出会
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なつかしさの中に隠された高いメッセージ性

ななせさんの作品にはいつも強いメッセージが込められている。 本作品では「自己肯定感、あげていこうね」じゃないだろうか。 多感な時期に必要なのは逃げ込める場所。でもそれだけだと逃げっぱなしの子供になって
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かわいらしいお話でした。

謎の美学で生きているトラ。 クロと喧嘩をして、ハナちゃんが忘れられなくて戻るトラ。今後は美学に基づきハナちゃんを遠くから見つめるだけにするんだろうか。それともアプローチするんだろうか。問題が解決しない
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波乱万丈の人生に逆転満塁ホームラン

エブリスタウンで起こる奇跡には、常人では起こしえない奇跡、幸せにダイレクトにつながる奇跡だけでなく、別の種類の奇跡も起こる。 ヒロインは記憶を失った40代の女性 寧音(ねね)。 立て続けに不幸に襲わ
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過去は事実として存在する。しかし。

とても優しく物悲しい話でした。 人間というのは、取り返しがつかなくなってから事実を知ることしかできないのだろうか。 時という見えないものを可視化するのが時計(本作では懐中時計)である。父親の遺品である
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しのき美緒

冬の夜空に奇跡が

まず、きちんと古墳の石室の内部、埴輪が古墳を取り巻くように円形に配列されているのも描かれていて感心しました。 その上に美形の王、可愛らしい埴輪たち、巫女の役割をする2人の女子高生がどれもキャラクターゆ
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しのき美緒

耽美な世界観に魅せられる

楽器店のどこか浮世離れした美しい青年店主と、手伝いの少年。 店主はチェロをたしなみ達者に弾きこなす。不思議と近代的な建築ではなく明治大正期の洋風建築、大きな窓、唐草模様が浮き出した分厚いカーテン、紅い
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しのき美緒

文学はATに敗北した。

全然わからない。 なんかふんわり楽しかったけど、きっとそれでいいに違いない。 ストーカーはついてこなかったのか一本の大根となって彼に食べられて積年の思いを達したのかそれもわからない。 きっと作者もわか
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しのき美緒

人生はギャンブル、離れじのふたり

仲がいい夫婦とか恋人たちって顔も仕草も似てきますよね(そんなことありませんか?) このお話のふたりは名前まで似ていて、最後には考え方も似てきます。 大丈夫なのか、そんなに楽観的で、と思わなくもないけれ
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しのき美緒

課題解決の物語

奇跡というものはいわばチートである。 智樹君は40年越しの心の錘を、「奇跡」という手段で解決した。 けれども40年ぶりに再会した級友たちは、新たな課題を智樹君に与えた。 智樹君は残りの人生でこの課題を
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しのき美緒

コーギーは正義! かわいいも正義! どんでん返しも正義!

かわいい、かわいい。 背中のちょっと黒い(腹も黒い)コーギーのおまわりさん。 胴長短足ぷりケツの「ヤツ」は悩める自殺志望者を救おうと今日もあちこちを飛び回っているに違いない。 おまわりさんと女の子のや
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しのき美緒

騙されちゃった

面白かったー! 掌編の中にこんなに捻りをいれていて読みやすいのはさすがです。 内容については黙っておきます。 ただひとつ言えるのは、、、 この主人公、これからも苦労が多そう💦
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しのき美緒

親子の愛情を信じさせてくれる物語

これぞ、妄想コンテストの王道! 二転三転するストーリーにはらはらし、いったい母と子は会えるのかとどきどきしました。そしてヒューマンなラストが素晴らしかった。 なぜお母さんが死んだふりをしていたのか、年
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大切なたったひとりのために力を発揮できる

星集めの画家、もう名前だけでロマンティックである。 その画家であるステラと、需要のない魔法しか使えないアルバートの素敵な恋の物語。 とにかく色彩や景色が美しい。星は紫紺の空にチカチカと無数に輝き、ステ
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舞子とケイティの物語

ヒロインの舞子は脚本家。勉強をし直すために、ひとりロンドンに来ている。 好きな男性も脚本家。しかも成功を手に収めている。そのひとと同等でありたい、自分を対等と認めさせたい、実績を作りたいと肩ひじ張って
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ハレルヤ! ダナン

流星はプロのシンガーだったがヒットが続かず、失意のうちにダナンで旅行代理店を営む姉のところへ逃げ込む。そこで……ボーイミーツガール。 まあかわいらしくぎこちない恋愛が始まるのだが、浜辺で、カフェで、チ
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クリスマスにふさわしいヒューマンな物語。

ドイツの架空の村が舞台。身分が違えば話すことはおろか相手をみることもできない、そんな時代のお話だ。 三人の生まれも育ちも違う子供たち。 クリストキントは三人に素敵な時間をプレゼントした。豪華なごちそう
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青春の蹉跌と新生

人間とは社会的な動物だといわれている。 他者との関係のなかでわたしたちは生きている。 なのに主人公木月は世間との関係性を断ち切って暮らしているという。 いったいどんな心持ちなのだろうかと想像してみる。
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しのき美緒

無償の愛、魂の成長の記録

地球は汚染されつくし、人類は大きな賭けのような無謀な作戦を断行した。 雨が降り続き刻々と姿を変える大地、荒れた灰色の海。風にもまれる白い鳩。 海に飲み込まれてゆくあらゆるもの。壮大な情景描写から作品は
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高い技術によって描き出されるのは現実か、それとも白昼夢なのか

人は誰しも別れを経験する。避けられない別れかもしれないし、避けることができた別れかもしれない。 別れの直後には楽しかった思い出や、したかった希望がしばらくは頭の中で渦を巻く。それが恋しい人であればなお
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イエローサブマリンは大冒険の歌で、戦いの歌

二人組のロックバンド、イエローサブマリンは浅黄の天才と詩愛(シーラ)の声で破竹の進撃を続けてきた。はずなのに……詩愛は浅黄から突然の終わりを告げられる。 詩愛は「自分は相手との接し方を間違っていたの
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この作品は非公開になりました

凝った構成で無限をあらわす。

人の想いはそのひとがいないからといって、止まっているわけではない。 誰かにバトンタッチしていく。その思いを時計に仮託した作品。 文中に父の腕時計、彼の腕時計、町の時計、と三つの時計が出てくる。 ひとつ
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ホットココアを飲んだような読後感

クリスマスイブまであと1週間。 そうだそうだ、プレゼントを用意しなくては、と焦りだす頃。お店も街も活気づくころです。 ところで彼氏彼女へのプレゼントって聞くのも恥ずかしいし、でも変なものをあげちゃって
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しのき美緒

青い鳥はどこにいる?

ヒロインと、ヒロインの母の再生が本作では描かれている。 主人公はウェディングプランナーという人の幸せを演出する仕事を手掛けている。が、いろいろと行き詰って退職を考えている。あるある、あるよねーとここま
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しのき美緒

長く辛く曲がりくねった道を光は照らす

「これ重いでしょうか。読んでみてください」とDMをいただいて読んだ。 重かった。でもこれはななもりさんによって書かれなければいけない作品だったので、さらに書き込むことをお勧めした。 ひと一人の人生はか
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恋に恋しているうちに恋を知る

彼が欲しくてならない舞花。恋に恋するお年頃らしく何をみても何をしてもまだみぬ恋と恋人を妄想してしまう。 この妄想がまたひどく他愛なくかわいらしい。 終業式の夜、舞花はヤンキーっぽくて敬遠していた風太に
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縁の不思議さを感じた。

滑らかな文章が心地よく、最後まですっと読めてしまうが、ひとつひとつのエピソードは大変に重たい。 妻と子供の死。引きこもり。自分の目の前で別の男の子供を出産した女との再婚 決意までに必要だった時間や勇気
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