愛良が背を見せたと思った次の瞬間、立て続けに襲ってくる彼女の白刃。  まるで独楽のように身体を回転させながらの連撃。  とてもナイフ一本で受け切れる重さではない。  いつの間にか落としていたナイフには目もくれず、彼女の“次”を警戒する。  跳躍し、私の頭上を取った愛良はまた樹の幹を蹴り、身体を独楽のように回転させてきた。  地面に飛び込むように転がって、斬撃を回避することには成功した。 (……抉る一撃か。当たったらすごそうだ)  私の背後にあった樹の幹が深く抉れていた。  おそらく肉もああなるだろう。  左右にフェイントを入れながら彼女が迫って来る。  迷うことなく私は左
「つぅ――!」  屈んだまま、私は足払いの要領で、左足の爪先を彼女の剣にぶつけていた。  爪先に鉄板を仕込んでいたからこそ出来る芸当だ。  普通なら更に追撃。  だがそれ以上の追撃をすることなく、愛良は背後の樹へと跳んだ。  ――またあの攻撃か。  しかし、予想とは裏腹に彼女はそのまま姿を消した。 (……逃げた?)  気配は感じない。 「っ! すばしっこい……!」  私の意識の外から感じた殺気。  愛良だ。  どうやら跳んだ先とは全く違う方向から強襲してきたらしい。  小柄な体型を最大限に活かした動き。 (……落ち着け)    左の突きを蹴りで逸らし、右の振り上げは
いえいえ。私も遅くてごめん。 戦闘、気に喰わなかったら直すわ。 (……手練れだ)  姉妹の片割れから隠れるように樹の裏へ隠れ、一息。  ナイフや銃が当たり前のこの現代に、時代錯誤とすら取れる剣が武器とは恐れ入った。  しかも相当に仕上がっているとみた。 (恋澄ではないから……あれが愛良アンナか)  彼女らの言葉を借りるなら“妹”の方。  プロジア曰く、白兵戦のスペシャリスト。 (……くそ。気に喰わない)  彼女の“生きている”眼がこれほどまでに私の前を塞ぐものとは思わなかった。  これならまだ知らない方が良かったと思う。  ふと銃を見る。銃身で剣を受け止めてしまった
こんにちは! スター大量にありがとうございますぜ! ページコメも! 鼻血出やがりましたか!ww
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(爆発音が多い。……手こずっているのか?)  いつにも増して爆発音が多いことに、私は驚いていた。  基本的に『爆破』は織り交ぜる程度なのに、今回は押し出している。 (それだけの相手なんだね。《歩く武器庫》は)  『私を殺せる相手が私の所に来ます』。プロジアはそう言っていた。  自分は囮程度に時間は取られない。  彼女の言葉は常に経験に基づいて出される言葉。比喩でもなんでもなく、事実しか言わない。 (どれだけ時間を無駄にさせられるかが、勝敗の分かれ目だね。恋澄アンヌ)  奴はきっと来る。そして、その片割れも。 (……彼女たちが私の焦がれる存在なら……)
お久しぶりです。 何か2ページしか書けませんでした! 戦闘シーンは主に河山氏に任せてしまうことになりそうだ…! (これはこれは。中々の手並み)  『爆破』をこうもやり過ごされるとは。  というよりも、無意識に包帯を外していたことに驚くべきでしょうか。  媚びぬ、退かぬ、省みぬ、と言う奴なのでしょうね。  物陰に隠れ、手早く予備弾倉に取り換えながら、そんなことを考えていました。  手斧は、まだ良いですね。  私の隠し芸が『爆破』だけと踏んで飛び込んできてくれる人用ですからね。  ……水瀬さんには無用の長物になりそうです。  どうやら撃ち合いを所望しているようですし……。 (
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 私とディーを誘い出して……といったところですか。  それはそれで良いですね。 「……もしもし、エーフィンですか? 外には行かず……えぇ、分かっていましたか。ならいいです」  病院の外に出ると、暖かな日差しが私を出迎えてくれました。  周囲が騒がしいですね。  なんだ、思った以上にあっさりとしているじゃあありませんか。  ディーも恐らくはそう思っているのでしょうね。  ……また、嫌われてしまいますね。 「お望み通り、出てきました。だから……遊びましょう」  懐から銃を取り出し、幾多もある樹の一本へ向け、幹のど真ん中へ銃口を向けます。  そして、迷うことなく引き金を引きまし
 着信がありました。  携帯電話を取って、耳に押し当てると、良く知った声が。 〈中々味な真似をしてくれるわね、プロジア〉 「あらあら。良く私の番号が分かりましたねフライン」  レイブンズ頭目であるフライン。……来ると思っていましたよ。 〈私達より先に隼垣涼一郎を確保するとはやられたわ。クソったれ〉 「いえいえ。運が良かっただけですよ。それで、貴女はいつ来るのですか? 先ほどから下の動きしか分からないのですが」 〈来てほしいのならいつでも行くけど?〉 「ぜひ来てください。負けていいのなら、ですが」 〈ええ。勝つために、行かせてもらうわ〉  そう言って
なんか相変わらず遅くてごめんね。 人事異動で仕事の引き継ぎとかしてたら書く暇なかった…。  轟音、そして破壊音。  地震が起きたのかと思ったレベルだ。 「ふふ。これはまた楽しいことを……」 「ねぇプロジア。ホントは――」 「言っている暇はありませんよ。さぁ歓迎しましょうか」  コートを翻し、迎撃に向かおうとしていたプロジアが一度足を止め、隼垣へ顔を向けた。 「あぁ、そうだ。その縄、あんまり動くと切れるので下手に動かないでくださいね」  それだけ言い残し、プロジアは去って行った。  ……本当に何を考えているのか分からない。  それじゃまるで……。 「その立ち回り方は不気
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「……ディー。飾らないで良いです。貴方の、今の考えを聞かせてください」 「一時的に記憶を混乱させて、そのまま日常に戻ってもらう」 「ディーさん、それはいくらなんでも……」 「エーフィンは黙ってて。……裏の争いに、表の人間が入るなんて馬鹿げている。もちろん、今この状況もだ」  こういう発言が許されているのはきっと私がプロジアに気に入られているからなんだろうね。  でなければ、今頃ドカン。 「……ディーは『任務を切り上げろ』、そう言っているのですね?」 「そう聞こえたなら、それで正しいかも」  シンとなった室内に、着信音が鳴り響いた。  着信があったのはプロジアだった。 「はい
 そんな料理、普通は見逃せないよね。 「いるんですよ。貴方が欲しい人が。と、言っても本当に貴方自身かは分かりませんけどね」 「どういう意味だ?」 「貴方もご存じ『アナクフィス』」  ……一瞬、隼垣の顔が強張った。話には聞いていたけど、やっぱりいい思い出はなさそうだね。 「それと、『レイブンズ』。どれも人道的な扱いはくずカゴに捨てている人達ばかりです」 「だから『ブラックホークス』に入れと?」 「はい。理解が早くて助かります。それで、答えは?」 「最初から答えてるだろ。『ノー』だ」  ……あぁ、分かった。  どうやらプロジアには――。 「無駄だよプロジア」 「何がですか
久しぶり。復活したわ。 「プロジアさん、連れてきました」  廃病院があっという間に、『ブラックホークス』の防衛施設となった。  先ほどエーフィンがメンバーを何人か連れてきたのだ。  あまり数を掛ければ、周辺から怪しまれるからね。 「ご苦労様ですエーフィン。配置にはついてますね?」 「抜かりなく。俺は特に指示が無かったんですけど、どうすれば」 「手薄なところをお願いします。ディーは特に指示はしません。好きに動いてください」 「……了解」  私が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにしてくれたのはありがたい。  ……私だってメンバーの能力の巻き添えに遭いたくないしね。
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ごめん、河山氏、クロスオーバー明日提出するから!! ほんっとごめん!!
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……中学生とコメのやりとりをしている事案が発生(ぼそっ
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 あの瞬間、彼は私を排除する算段を本気で立てていたでしょうね。  そして、長い黒髪の子。  一瞬だけ目を逸らしました。  どう好意的に受け取っても、“何かありそうだ”。  そう思うのが自然で。 (なら訳アリを……いいえ、止めておきますか)  今はまだその時じゃありません。  二兎を追う者何とやら、ですね。  確実に目の前の目的を完遂させることにしましょう。 (それに……棚からぼた餅、と言う言葉もありますしね)  意図して動けば潰されるだろう。臆病なくらいが丁度良いのです。  でなければ久次優に喰われてしまいます。 (……ですが)  “偶然”なら、どうしようもありません
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あ、ここから場面転換です。 七行くらい改行しています。 「……と言うわけです、隼垣さん。私の予想ではもうそろそろお友達が貴方を救出に来るはずです」  あらあら。無言で睨まれると中々辛いものがありますね。  猿轡も外して、喋る自由があるというのに、ずっと無言を貫いているのです。  下手なことは喋らないって奴なのでしょうか? 「そうそう。ずっと疑問に思っていたのですよ。あの車椅子の女の子と、長い黒髪の子は誰なのですか? お友達ですよね?」 「……俺が喋ると思ってるのか?」  僅かな逡巡。あぁ、どうやらこれは防衛省の仕事ですね。  道理で不透明な点が多いと思
 つまるところ、これはリターンマッチなのだろう。 〈あの狸さんのことです。今この瞬間、ディー。貴方の真上に核を落としても不思議じゃありませんよ?〉 「……随分、厄介なのに喧嘩売っているね、私達」 〈まあ、そういう訳なので、そろそろ戻って来てくれませんか? そっちも“色々”あったようなので〉 「……何の事?」 〈声で分かりますよ。貴方は何かに動揺している。……違うというなら、そう言ってください〉  口を開こうとしたら、すかさずプロジアが次の言葉を発した。  相変わらず舌戦は叶いそうにないな。 〈迷っていたら死にます。それが良い選択だろうが悪い選択だろうが、選べなかったら死ぬだけで
〈心配してくれてありがとうございます。ですが、すぐに仕掛けて来ませんよ〉  えらく断定的な物言いだった。  常に最悪を想定しているような人間が吐く台詞とは思えない。 「……何だか随分のんびりしているね」 〈経験則、そう思っておいてください〉  煙に巻くのが彼女のやり口だが、今回ばかりは否定的になってしまう。 「ねえプロジア、やる気はあるの?」 〈手を抜いてこなせる任務なら、最初から私は出ていませんよ?〉  それを言われると、弱い。  彼女が出る、というのはそれだけ切羽詰まった状況だ、ということなのだ。  彼女との任務は大体死に掛けると言えば分かってもらえるだろうか。 〈バ
お願いしまーす。  やられた。  完全に、してやられた。 「……くそっ」  既に恋澄アンヌの姿は無く、残ったのは私一人。  彼女の言葉が私に揺さぶりを掛ける。 「うる、さい……。私の“境界線”は私で決める……!」  “向こう側”の存在が言った言葉だ、本来なら聞くことすらおこがましい。  故に、私を縛り付ける。 (これが『世界最強の能力者』の周囲)  どうにも彼は私とは真逆の存在を引き寄せる才能があるらしい。  彼には変われる存在。私には……ロクデナシが。  既に空となった焼きそばの器をゴミ箱に放り投げ、来た道を真っ直ぐ戻ろうとした。 「……もしもし」  だが、
 ……そう、思えればどれだけ良かったのだろう。  エイジアに会うまでの私なら、きっと完璧に感情を処理できたはず。  なのに、今は――。 (……馬鹿馬鹿しい。私は、私だ)  ああ……会いたくなかった。  彼女達に、会いたくなかった。  私がとても矮小な存在だと、大海を知らぬ蛙だと、そう突きつけられているような気がして。  気づけば、私は席を立っていた。  恋澄が警戒した様子で構えるが、気にしない。 「ここでやり合う気は、無い」  両手を挙げ、非交戦の意を示す。  普段なら絶対にやらないこの行動も、きっと恋澄の眼を見てしまったから。  どうにも、私はまだまだのようだ。
「……私に言うよりはプロジアに言った方が良い」 「爆破魔か。それはまた難易度高そうだねー」  全権限はプロジアにある。  だから返してくれるか、と聞かれれば恐らくは無理。  ……まあ、そういうことだ。  『ブラックホークス』としての私の考えは。  それにしてもと、恋澄の眼を見る。  あぁ……やっぱり。 「……ある日から《姉妹》の噂を聞かなくなった。……何故?」 「教えてやる義務はないと思うよー」  彼女の眼は既に、私が聞き及んでいる《姉妹》のソレではなかった。  どこか吹っ切れたような、そんな眼。  マイナスからゼロに、ゼロからプラスになろうとしている……そんな眼だ。
 それだけに、残りの二人の情報がないというのは全くもって不可思議。  あらゆる分野のスペシャリストである彼女ですら、あの二人の情報は掴めなかったということになる。  つまり、 (それだけ防衛省が本気を出している、ってことなのか……?)  どちらにせよ、注意が必要だ。  不要な事柄に首を突っ込んで身を滅ぼしました、では笑えない。  そんなことを考えていたら、落ち着いたのか恋澄が戻ってきた。  ……というか、戻ってくるんだね。 「死ぬかと思った……」 「……そんなに辛くないと思うんだけどな」  席を立ち、店主にソースの追加を頼むが、断られてしまった。  『俺が捕まっちまう!
ごめん!昨日は予定が合って書けなかった!!  調子が狂う。  この一言に尽きる。  同席の彼女こそが、《姉妹》の片割れである恋澄アンヌ。 (……なんだよね?)  最初こそ、隙が感じられぬ一流のエージェント。と言う印象だったのだが……。 (辛いのかな、これ?)  焼きそばを一口食べた瞬間、顔を真っ赤にして自販機まで走っていく彼女の後姿を見てしまうと、どうにも……。  それにしても、だ。  やはりあの集団は隼垣涼一郎の仲間だったのか。  ならあの銀髪は《姉妹》の愛良アンナで間違いないだろう。 (ならあれは《歩く武器庫》、か)  その面子で推測するに、あの黒髪は《歩く武器
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以上! よろしくお願いします!
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 女性の中に一人だけ男がいた。……どうしてあんなに肩身が狭そうなんだろうか。  その男が僅かに動くと、陰に隠れていて良く見えなかった二人の姿がはっきりと分かった。  銀髪と金髪というこの平和大国日本じゃまずお目に掛かれない髪の色。 (留学生かな? まあ、どうでも良い――)  そこまで考えたところで、ふと“その可能性”に気づいた。 (……いや、まさかね。いくら何でも、堂々とし過ぎている)  それに、こんな白昼堂々、おまけに人目が沢山のこの場所で仕掛けてくるような奴らじゃないはず。    仮にも防衛省だ。  いくら素性を隠しても、突き止める奴は突き止める。 (なら……良い)  
「張り紙読んだか?」 「うん。頂戴」  渋々と言った様子で、店主は実に手際よく、出来立てをパックに詰めてくれた。 「訴えないでくれよ?」  頷き、焼きそばを受け取った。ずっしりと重く、赤々とした焼きそばが陽を浴びて、これでもかと色を自己主張している。  テーブルに座り、割り箸を持つ。  手を合わせてから、麺を一気に口へ運んだ。 「…………普通だな」  これなら私の作るホットドッグの方がまだ辛い。  誇大広告をするような店主にも見えないし、これは一体どういうことなのだろうか。  とりあえず半分くらい食べてからにしよう。それで、味を変える意味も込めて、店主からソースをもらおう。
 だからこそ、良く分からなかった。  過去の経歴を見る限りでは彼女たちは隼垣の命を狙っていたというのに、今は全く真逆の立場である護衛。  ……“何か”があったんだ。  戦うだけの彼女達は“何か”を見出したんだ。 (……じゃなければ、彼女達は一体どうやって……)  確かめなければ……ならない。 「……ん」  不意に飛び込んできた刺激的な香り。  いつの間にか人が多く居るところまで来てしまった。噴水がある……広場か?  来た道を戻ろうとしても……出来ない。  この刺激的な香りは悲しいかな、私の心を掴んで止まない。  意を決し、香りの元まで歩いて行った。 「屋台って……今時
 最大限のゲイン、最小限のリリース。  彼らには隼垣の皮膚一欠片すらやらない。  さて、もう一つ考えられるリスク……というか、恐らくこれが最も考えられる可能性。 (……こちら側にいない者の命を奪うのか、私は?)  彼らの仲間が助けに来ることだ。  相手は防衛省。こちらの居場所がバレるのも時間の問題だ。  その時、私は銃口を向けられるのだろうか?  私の良く知る“あの眼”を向けてこないだろう相手に、引き金を引けるのだろうか。 (……駄目だ、切り替えろ。《歩く武器庫》と《姉妹》が来るかもしれない。気持ちが固まっていないと、死ぬ)  防衛省のエージェントである《歩く武器庫》――水瀬
(……良いところだ)  平和の代名詞と、そう呼んで差支えないこの東兄弟社市。  私のような人間が大っぴらに出歩いてい良い所じゃないだろうに、ここの雰囲気がそれを許してくれているように思える。 「……止めとこう。柄じゃない」  今回の目的を再確認。  『世界最強の能力者』である隼垣涼一郎を拉致し、『ブラックホークス』への加入をさせる。  これだけ。  予想できる障害はいくつかある。  一つは、漁夫の利を狙う第三者の横槍。  例えば、アナクフィス。彼を狙って、何回かやらかしているらしいし。  そして、秋津。  こちらのやろうとしていることを許容してくれるほど、楽しい交流をして
質問! 水瀬達ってディーの顔は知ってるの? プロジアの顔は知ってそうだったけど、ディーは異名しか知らなさそうだったし。 今回のチャプターはディーが水瀬達の前に偶然現れた!ってとこで終わろうと思ってたからさー。 返答次第ではそのまま戦闘されてしまうから、もし知ってるならこの終わりは避けようと思う。
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